第6章 うすべにひめ
欲しいものがあって、取り戻したいものもある。
いつだって私は私のやりたいことを最優先するし、そのためならばどんな手だって使ってやろうじゃないか。
…とまあ、今までそんな感じで生きてきたので、今回のことも、このスタンスでやっていこうかと思っている。
理由は簡単。
私は私が世界で一番大好きだし、というか最早愛しちゃってるの域に足を突っ込んでいるし、
そんな私のために苦労を惜しまず働いてくれる人もやっぱり私しかいないので、当然の帰結としてこういうノリに行きつくわけだ。
やりたいことして、何が悪いの?
使えるものを使って、何か悪いこと、ある?
私はなにより自分のために、「キセキ」の玉座が欲しいのだ。
「ってわけで、本日食堂の特等席とやらにお邪魔してきましたー!」
「知ってます。噂されてましたよ」
誠凛寮の小ぢんまりとした食堂には、卓を挟んで会議中の私と黒子くんしかいなかった。
夕食にはまだ早い時間だし、他の先輩は部活で帰ってきていない。かがみんは、まだ仮入部期間でもないのに練習やら説明レクリエーションの準備やらにつきあっているそうだ。
「それで、どうでしたか」
「忌憚なく言えばクサかった」
「そうですか……」
目下の話題は、キセキの世代と、現在そのおまけになっているクラスメイトのことだ。
学費提供するけど、代わりににあいつらなんとかしてね、と白金さんのお家から言われてしまっている以上、対応しないわけにはいかない。
そのため、一番"落とし"やすいクラスメイト、皆元和泉ちゃんから当たっていくことにした。何事も順序良く、だ。
「まあ、意図的に私の邪魔してるわけでもないし? これからハメるってのも結構心苦しいんだけど…」
「……それだとボクが困ります」
「知ってるし、ちゃーんとやりますよって」
私が奪還すればいい。
それだけでことはすべて済む。
「まずは、皆元さん追いつめて、ボロを出してもらわないとね」
協力よろしくね? と聞けば、こちらこそお願いします、と答える黒子くんは、頼もしいことこの上ない。
卓の上に開かれた絵本に視線を落とす。
見開き一面の春色の花と茨の中、
呪いを解いてくれる王子を待ちながら眠る少女が描かれていた。
かがみんは巻き込む。黄瀬君も剥がさなきゃ。
ぼんやりと考えながら、ページを繰った。