第7章 ・
目を覚ました。
横たわったまま周囲を確認する。
カーテンで仕切られた、清潔な空間。
どうやら保健室のベッドのようだ。
まだ、生きているのかと安堵の息を漏らす。
「……良かっ」
「黄瀬くん」
「たぁーー!?」
そして、死角からの声に飛び起きた。
仕切りのカーテンの隙間から、こちらを覗き込む影がある。
「く、黒子っち……?」
「元気そうですね。安心しました」
そういえば、今日はもともと、放課後に黒子と図書館棟で落ち合う約束をしていたのだ。
本を選ぶのを手伝ってほしい、というメッセージが来て、自分のほうが先に到着した。
振り返ってみて、かすかな違和感を覚える。
そこから先が、思い出せない。
集中しようとすればするほど、起き抜けの夢のように、するすると零れ落ちていく。
「保健の先生は、疲労が原因と言ってましたが……」
「ちょちょちょっと待って欲しいんスけど、俺、そもそもどうしてここに?」
「待ち合わせ場所で、黄瀬くんは居眠りしてたんです。
ただ、尋常じゃなく魘されていたので、それで保健室まで……」
「黒子っちが、俺を担いで?」
「無理に決まってるじゃないですか。見てください、この力こぶ」
見てくださいと言われても、苦笑いするしかできない。
「大丈夫ですよ、黄瀬くん。確かに君はさっきまで意識は落ちてましたし、
そのせいで魂元剥き出しでしたけど」
「それどこも大丈夫じゃねーっスよ……ほぼ全裸だったってことじゃないスか」
黒子以外に運ばれたということは、そいつに自分の裸を見られたにも等しいわけで。
芸能人としてはあるまじき行為だ。
「本当に、誓って目にしてません」
「どうしてそう言い切れるんスか」
「運んでもらう前に僕の上着であらかた包みましたし、
それに……火神くん、犬が大の苦手なんですよ」