第5章 お祈りはいつも届かない
「白金家って、あの?」
「それ以外にないだろ」
かつてキセキと同格にありながら、重種の後継が絶えてしまったせいで、今は表舞台より姿を消した名家。
その一番最後の重種は、他の色付きの家とのトラブルに巻き込まれて亡くなったと聞いている。
色付きの家に恨みを抱いているのでは、とまことしやかに囁かれる家が絡んできたことを、偶然と看過するのはあまりに難しかった。
「おかしいとは思ってたんだよ。ただのサルがどうしてここに入学できたのか。でも、白金の力を使って裏口入学したなら、納得がいく」
緋那の推理は確かに筋が通っている。
表舞台から姿を消したとはいえ、まだ白金家が持っている権力は大きい。
帝光学園の設立には、色付きの家が深く関わっていたという話も、和泉は母から教えられていた。
その中で最も精力的に力添えをした家が白金だったということもあり、今でもそれくらいの裏工作ができる可能性はある。
「で、なんで白金家がそんな事をしたかって話だけど……俺は赤司の記憶喪失か、黒子の処遇云々と関わってるんじゃないか、って睨んでる」
「じゃあ、白河さんは」
「まだ正直なところはわかんねーけど、そのうちキセキに近寄ってくるかもしれない」
何か、大変なことに巻き込まれ始めている。
急に深刻な顔になった和泉を見て、緋那はその不安を拭うような、頼もしい笑みを見せた。
「そう暗くなるなよ。逆に言えば、あいつを調べれば解決の糸口が見つかるかもしれない、ってことだろ」
だったらこっちから仕掛けてやればいい。
白河と仲良くなれれば、そして自分たちがキセキと白河の共通の友人になってしまえれば、彼女の動向はずっと把握しやすくなる。
探りを入れるためのハードルも、少しくらいは下がるはずだ。
そして近々、部活紹介のガイダンスがある。
各部活動に新入生がお邪魔して、ちょっとした体験入部をするという催しなのだが、その日はただでさえ広い帝光の敷地内を巡ることになるため、丸一日が部活紹介に費やされる予定になっていた。
白河と部活を回って、キセキと引き合わせた時。
彼女は一体どんな反応を示すのか、この目で確かめてみないか。
緋那の提案に、和泉は、きゅっと唇を引き結んだ。