第5章 お祈りはいつも届かない
「先祖返りと重種にまで媚び売っちゃってさ。確かアンタのクラスの高尾もあいつと仲良くなったんだっけ?」
「うん、結構一緒に行動してるかも…」
「絶対利用されてるよ、それ。高尾もかわいそうにねー」
まああいつも緑間の取り巻きなんだけどな、と言い捨てて、緋那は食事に戻る。
もう一度和泉が白河を見た時には、黒子とカガミを含む男子五人に囲まれ、楽しそうに昼食をつついていた。
談笑しながら、やけに慣れた様子で可愛らしく舌を出す。所謂「てへぺろ」というやつだ。
カガミに額を小突かれてもニコニコしている白河が、まるで「私は異性に囲まれて当然だ」と言外に伝えてきているようで、和泉には空恐ろしく見えた。
実を言うと、入学して以降、黒子に避けられているような気がするのだ。
和泉の記憶が正しければ、黒子は意識して誰かを遠ざけるような性格ではない。
探しても見つからないということは多々あれど、話そうと思えば、人の話は真摯に聞いてくれる誠実さを持っていた。
しかし、最近の黒子はおかしい。
白河経由で連絡先は交換したし、度々赤司のことについて相談を持ち掛けようともしたのだが、キセキの話題になると、黒子は早々に話の流れを別の方向に持っていってしまう。
それにうまいこと乗せられて、キセキについての件がうやむやにされているような、そんな気がした。
どうしよう。
赤司の記憶喪失について、黒子は確実に何か知っていそうなのに、肝心なところが聞き出せない。
まさか黒子くんが犯人かとも思ったが、それはない、と緋那に否定された。
「俺さ、そのことについてなんだけど、白河が怪しいんじゃないかって思ってるんだよな」
焦る和泉に、緋那はそんな推測を披露した。