第2章 カウンターパートの赤いやつ
そして今、和泉は「運命の人」の病室にいる。
「……赤司君」
呼びかけても、規則正しい電子音が響くだけだ。
ベッドで眠る赤司に取り付けられた酸素マスクが、呼気で時折白く濁る。
それがなければ、息をしているのかどうかも解らないほど、普段の姿よりも弱々しく見えた。
クリスマスと誕生日祝いを兼ねたパーティーで、彼は何者かに襲われたらしい。
理由も犯人も知らないが、それだけは人づてに聞いた。
帝光の中等部に入って、三年かけてようやく実りそうな恋が、もしかしたら終わってしまうかもしれない。
この前、ようやく好きだと伝えられたのに。
自然と膝の上の手に力がこもる。
本当ならあのパーティーで、赤司は返事を聞かせてくれるはずだった。
今となっては、もう返事などどうでもいい。
なんでもいいから、声が聞きたい。
できることなら、また笑ってほしい。
「みんな待ってるよ、赤司君のこと」
ぽつり、と呟くが、やはり返事はない。