• テキストサイズ

【黒バス】フェアーテールの前日譚【パラレル】

第5章 お祈りはいつも届かない


たぶん、相手には車の窓と、映り込む景色しか見えていないのだろう。
それなのに、視線を介して、心臓ごと鷲掴みにされた気分だった。

もう雷にでも撃たれたみたいに頭が真っ白になって、自分の心音しか聞こえなくなって――正直な話、その後の記憶がちょっと飛んでいる。
背中を勢いよくぶっ叩かれるまで、名前を呼ばれても肩を揺さぶられても無反応だった、とは、後で親父に聞いた話だ。
気が付いたら、女の子どころか、公園から人影は消えていた。
どれだけの間フリーズしてたんだろうな、俺。

そんな状態だったから、勿論親父の頼みとやらも聞き逃していて、家に帰る道中、信号待ちの間に改めて聞いてみた。

「さっきの頼みって、なんだったの?」

それとなく、あの女の子が絡んでいることは予想がついた。
じゃなきゃ、こんな風にこそこそと会わせる理由が無い。
そしてきっと、あの子は俺のことを知らない。
俺どころか、親父のことだって。

「ずっと先のことになると思うが、お前にはあの子を守ってほしい」
「守るって、何から」
「その時になれば、わかる」

ハンドルを切りながら親父は言う。
車は家に向かっているはずなのに、これからどうしようもない所へ連れていかれるような予感がした。

「お前じゃないとできない事だ、和成」
「そっか」

親父の口ぶりから、あからさまに面倒事の匂いが感じ取れた。でも、嬉しくないと言ったら嘘になる。
俺じゃないとできない。その理由は判らないけど、ともかく自分にも誰かを守ったり、助けたりできるんだって証明できた気がしたから。
まあ、世界はさすがにまだ無理だけどな。

結局、中学に上がった俺がお目付け役を命じられた相手は、あの時の女の子……ではなく、まさかのキセキの世代、緑間真太郎だった。
「なんでだよ!」って思ったけど、そこはまだ、助けが要らないくらい彼女の周囲が平和ってことだよな、と前向きに捉えることにした。学校は違ったし、他にもなんやかんやあったけど、全体的に楽しかったんで結果オーライだ。


でも今は、このまま、あの子を守る機会もなく、緑間のお目付け役を高校でも継続するんだろうなーとか考えていた今朝までの自分に、できることなら教えてやりたい。
何の前触れもなく彼女は目の前に現れて、俺の気も知らずに、黄瀬くんや赤司と普通に話していた。

ちょっと待って。俺聞いてないんだけど。
/ 90ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp