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【黒バス】フェアーテールの前日譚【パラレル】

第4章 気になるあの子


「それで、君は誰を探しているのかな」

緋那が爆発する前に、それまで静観していた赤司が割って入る。

「あ、そうだった」
「忘れてたのかよ……」
「いやぁ、うっかりうっかり」

緋那の突っ込みに、女子生徒は気が抜けたように笑った。
怒りが空気の抜けた風船のように萎んでいくのが解って、緋那は一気に脱力する。
すぐ近くから溜息が聞こえて反射的に振り向けば、火神は片手で額を押さえていた。同じく毒気を抜かれたらしく、先ほどまでの獣じみた雰囲気はもう纏っていない。

「……んだよ」
「別に?」

緋那の視線に、一瞬睨みを返してはきたものの、その声音に力は入っていなかった。
一触即発の危機が去り、教室内は元通りに動き出す。今まで見守っていた生徒たちも帰り支度を始めようと動き出したところで、女子生徒が教室中に向けて、新たな爆弾を投下した。

「えーっと、『ひかがみ』くん? っていますかー?」

火神の肩が跳ねる。
青峰はたまらずといった風に大笑いしはじめ、つられて教室の何人かも彼の方を見た。
緋那もうっかり吹き出しそうになるのを堪え、女子生徒に心の中で声援を送る。
いいぞ、もっと言ってやれ。

「……そんな膝の裏のような名前の生徒はいないが」

再び雲行きが怪しくなってきた教室で、赤司が苦笑しながらそう言った。

「なんかすごく強そうな名前だったんだよな……」
「それって、火神くんのこと?」
「あ、そう! カガミくん!」

うむむ、と悩んでいた女子生徒を見かねて、桃井が助け船を出す。
「おい、さつき」と不満げに青峰が声を上げた。

「なんで教えちまうんだよ」

面白かったのによ、と唇を尖らせる青峰を桃井が注意するより先に、火神が青峰に食ってかかる。

「ふざけんな、どういう意味だよ」
「あ? 何か言ったか?」
「ねぇお二人さーん、喧嘩してもいいんだけどさー」

火花を散らし始めた二人の間に、女子生徒が空気を読まずに口を挟んだ。

「どっちがカガミくんかわかんないけどさー、誠凛寮はカガミくん以外、もう全員揃ってるんだよねー」

だから迎えに来たんだったーと、教室の入り口から女子生徒は呼びかける。

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