第4章 気になるあの子
「次って、入寮式だよね?」
一通り教室で配られた荷物を鞄にしまいながら、黄瀬が和泉に問いかけた。
もう既に教室を後にしている生徒もいて、残念ながら黒子もそのうちの一人に入っていた。
なので同じ寮の白河に、黒子への伝言を頼もうとも思っていたが、こちらも早々と教室を後にしてしまい、和泉は肩を落とした。
聞きたいことが色々とあったのに、どうやらそれが叶うのは今度になりそうだ。
「そうだよ、寮で歓迎会やるんだって、実渕さん言ってたもん」
指定鞄の口を閉じて、和泉は黄瀬の顔を見る。
この後は各自、寮に戻った後で、入寮式という名目の歓迎会を受けることになっていた。
寮ごとに内容が違うため、ざっくりと「歓迎会」という括りをされていたが、概ね伝統的に何をするかは決まっているらしい。
「そういえば和泉っち、寮の場所わかってるんスか?」
「……実は、わかりません」
黄瀬に痛いところを突かれて、和泉は呻いた。
今朝の待ち合わせの時にここまでたどり着けたのも、裏道を教えてもらったおかげだったりする。
しかも、遅刻するという焦りのせいか、どこをどう通ったのか、記憶すらあやふやになっていた。
これで洛山寮への道がわかるというほうがおかしい。
「だからね、赤司君と緋那ちゃんと、一緒に寮まで行こうかなって思ってるんだけど」
「だったら、皆誘って一緒に帰らないスか?」
そっちの方が迷わなさそうだし、という黄瀬の提案に、少し考えて和泉は言った。
「でも、皆まだいるのかな?」
入学式後の顔合わせは、クラスごとに終了時刻が違うため、早々に終わらせてさっさと帰ってしまっている生徒だっているだろう。
そんな和泉の心配を、黄瀬は「大丈夫っスよ」と明るく笑い飛ばした。
「上級のクラス生が出てきたら、廊下とかちょっとした騒ぎになるはずだし、それがないってことは、まだ先生の話が続いてるんじゃないスかね」
「じゃあ、皆の教室の前で待ってようか」
「そっスね」
あっさり承諾した黄瀬と連れ立って、和泉はキセキや緋那のいるクラスへと向かう。
教室の前の廊下には、既に先客がいた。
それは自己紹介の折、白河と共に黒子に気づいていた、数少ない人物だった。