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【黒バス】フェアーテールの前日譚【パラレル】

第3章 水泡に口付ける


テレビや雑誌では毎日のように目にしていたけど、久しぶりに会った黄瀬君は、相変わらずキラキラしていた。

「会いたかったんスよー、学園の外じゃ怖くて電話もできないし」

拗ねたように口をとがらせる黄瀬君がなんだか可愛くて、和泉はクスッと笑みを漏らす。

「笑いごとじゃないんスけど」
「あ、ごめん!」

気を悪くしたような黄瀬の声に、和泉は咄嗟に謝った。

どんなメディアでも、黄瀬の姿を見ない日はない。
勿論、それ程の人気を誇る売れっ子モデルを周囲が放っておくはずもなく、彼は絶えず好奇の視線に晒されていた。
少しでも気を抜けば、いつ雑誌のネタにされるかわからない。
想像もつかないほどの緊張感の中で生活している人に対して、いささか不用意な行動だったと、和泉は反省した。

怒っていないだろうか。
少しおどおどしながら黄瀬を見上げる。彼は真っ赤になっていた。


そんなに怒らせちゃったかな。
どうしよう。


申し訳なさに和泉の視界が滲みかけたとき、黄瀬がいきなり大声を上げた。

「あーもー!」

反射的にびくりと肩を竦ませた和泉だったが、次の瞬間、

「和泉っち可愛い!」
「ふぇ!?」

黄瀬に抱きつかれていた。
周囲のギャラリーが一斉に息を呑む音が聞こえる。
驚きのせいで、涙はあっさり引っ込んだ。

「あの、えっと、黄瀬君!?」
「ダメっスよ和泉っち。男の前でそんな顔しちゃ」

ぷに、と唇を人差し指で押される。

「え、そうなの?」

『そんな顔』って、まさか男の子が幻滅するような顔しちゃってたの!?

モデル直々のダメ出しに、和泉はショックを受けた。


確かにちょっと泣きそうにはなったけど、そんなひどい顔してたなんて!


赤司君の前で変な顔はしないように注意しよう、と真面目に反省しかけて、

「……って、黄瀬君もダメじゃない!」

和泉は我に返った。

「ファンの目の前で女子にくっつくのは、芸能人としてどうかと思います!」
「友達にスキンシップするくらい、別に良いじゃないスか」
「友達と思わない人だっているかもしれないでしょ」
「あのね、和泉っち。ここ帝光の敷地内っスよ?」

男も女もないんスから、と言われてしまえば、ぐうの音も出ない。
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