• テキストサイズ

【黒バス】フェアーテールの前日譚【パラレル】

第3章 水泡に口付ける


緋那の懸念は見事に的中していた。






高い知名度を持つ帝光学園だが、特に高等部のそれは全国区といっても過言ではない。

その理由の一つとして、校舎の周囲に数多くの、一見すると屋敷のような寮が立ち並び、あたかもそこだけ別世界のような区画を形成しているという、施設の豪華さがあった。

綺麗に整備され、高級住宅街かテーマパークの一角と見間違えられそうな区画は通称「居住区」や「寮区」と呼ばれ、学校関係者のみ立ち入りを許されている。

もちろん、学校の敷地内なので周囲は塀に囲まれており、在籍する生徒には「歩く身代金」になりえる人物も多いため、厳重な警備が敷かれていた。

校舎にある時計台と合わせ、遠目に見るとちょっとした城と城下町のような威容を誇る帝光に通うため、そして条件のいいツガイと出会うため。
毎年高等部の狭き門には、全国から受験生が殺到するとか、しないとか。




和泉はここまでの情報しか知らなかったのだ。
情報を集めなくとも、中等部の生徒である以上、エスカレーター式に進学はできる。
そのため、高等部の情報を集める必要がなかった。

その結果が、これだ。



「ここ、どこ……?」



寮区のどこか片隅で、和泉はおもいっきり迷子になっていた。

帝光は歴史ある校舎の外観を守るため、増改築を繰り返した結果、現在の規模に至っている。
そのせいか校舎内、寮区含め、様々な道や廊下が複雑に入り組んで、さながら迷路のような様相を呈していることは、知られていた。


知られていたのだが、それを実際に経験する人数はというと学校関係者だけである。
帝光の内情を外にばらす人間が少ないことも拍車をかけ、「迷うって聞いたことあるけど、まあひとりで行けるよね」程度に考えていたことが、和泉の運の尽きだった。
/ 90ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp