第2章 カウンターパートの赤いやつ
「……これは大役だわ」
品物に添えられていた手紙に目を通すと、玲央はため息をついた。
差出人の部分に名前しか書いていないということは、本当に私的な頼み事であろうということくらい、容易に察しが付く。
そのまま便箋を細かく破り、部屋の暖炉にくべる。一瞬明るくなった炎は、久々に餌を与えられた生き物のように、密約の証拠をただの灰へと還しにかかった。
端から捲れ上がり、黒く変色していく便箋の断片たち。
常ならば、将来甘酸っぱい思い出になるはずの手紙を、こういう形で消し去るのは、あまり気持ちのいいものではない。
難儀なものね。
自由に恋すらできないなんて。
他人事のように考えるが、我が身もそう変わらない立場だ。
やや鬱屈した気分で荷物を見る。
赤司からの手紙が添付されていたのは、綺麗にラッピングされた、小さな細長い箱だった。
女性的な嗜好を持つ玲央は、その中身がアクセサリーの類だということに、すぐ気が付いた。
いい意味でも悪い意味でも目立つ赤司が、人知れずこんなものを買うのは至難の業だ。
桃井のお嬢さんに頼んだのかしら。
それくらいしか入手経路が思いつかず、玲央は日頃赤司と懇意にしている、色付きの子息たちの紅一点を思った。
甘い色のロングヘアと、愛くるしい表情。それに似合わぬ抜群のプロポーションを誇る彼女は、確か青峰の次期当主と婚約していたはずだ。
当然ながら、親同士が勝手に決めた約束である。
……これ以上考えても、更に憂鬱になるだけかもしれない。
頭を切り替え、手早く外出の準備を済ませた玲央は、車の送迎を断り、その足で病院へ向かった。