第1章 ”さよなら”
「実際のところ、カズサとはどうなってんの?」
顕微鏡を覗いているハンジさんは独り言のように尋ねてきた。
いきなり過ぎて声が出ない私とは対照的に付き合ってるとリヴァイがシレッと答えた。
それを聞いた何人かは驚いたようにこちらを見つめている。
「ほんとに?!えっ、マジ?!」
ハンジさんが半ば叫ぶと鬱陶しいと険しい表情でハンジさんの頭を握り潰そうとしている。
「いた、痛いっ!てっば!」
モブリットさんが止めに入り、頭をさすりながらニマッと笑うハンジさん。
エルヴィンさんは良かったな、リヴァイ。と肩をたたいているし、ミケさんはスンスンと私の匂いを嗅ごうとしてリヴァイに近寄るな。と威嚇されている。
あの日、約束した週末。
本当に抱き潰したリヴァイは満足そうで声も枯れ腰も鈍く痛む私の面倒を見てくれた。
それからはお互いの家を行き来するようになっていた。
以前とはまた違う距離の近さに研究室のみんなはやっとか、と思いつつ確認したかったらしい。
「目出度いじゃねぇかー!!じゃ飲みに行こうっ!」
飲み会が好きなゲルガーさんのお誘いに沸き立つみんな。
「おい、見世物じゃねえんだぞ」
「いーじゃん!嬉しい癖に」
ハンジさんとの攻防戦が続く中テキパキと今日の研究を進めているみんなに飲み会で何を言われ、聞かれるのかと早くも溜め息がでた。
リヴァイとはずっと順調だった。普段の仏頂面も二人の時は柔らかくて気を許してくれてるのも大切にしてくれてるのも大切にするのも嬉しかった。リヴァイがカズサと名前を呼ぶだけで胸が高なった。大学での勉強も研究も恋愛も充実していた。
※※※
「カズサぁ〜、ご飯食べに行こうよっ!」
「カズサ、週末の飲み会来いよっ!」
「カズサ、ショッピングに着いてきてくれないかな」
ある時点を境にリヴァイ以外のお誘いが増えた。
おかしいな。とは思った。
でも、リヴァイとはうまくいってたから気のせいだと思った。
案外嫉妬深いリヴァイは誰かと約束する時は報告しろ。といつも言っていたし、そうしていた。
ある日研究室に入室する際にリヴァイについて漏れ聞こえた話に納得している自分がいた。
みんな私を守ろうとしている。
でもリヴァイを信じた。今までのリヴァイを否定したくなかった。
あの日までは。