第1章 ”さよなら”
自分の目でみた光景が信じられなかった。
リヴァイは目を見開き、立ち止まったリヴァイに腕を絡ませている女性はどうしたのかと訊ねているようだ。
カシャンと壊れる音を聞いた。
それは私たちが終わった音なのか、信じてた自分なのか、わからない。
一つわかっていたのは、さよならだ。ということ。
小声で告げた言葉はリヴァイに届いた。
潤んできた瞳を見られたくなくて来た道を戻った。
少しでもリヴァイから離れたかった。
家に戻って明かりも付けずベッドでじっとしていた。
二人にその気があれば、もう一度やり直せるかも知れない。
でも、そうしたとしても。きっと些細なことでも私はリヴァイを疑い、責めてしまう。そしてお互い傷つけあう。
なり続けるスマホは電源を切った。ドアを叩く音には耳を塞いだ。
ちゃんとリヴァイと向き合うのが一番だとわかっていた。例えどんな結果でもその方がいいとわかっていた。
リヴァイが側にくると嬉しかったのに今は苦しい。
苦しいけど節度を持って笑顔でリヴァイとも話す。
何か言いたげなリヴァイは私の笑顔をみて口を閉じてしまう。
みんなを心配させないように笑顔で過ごすのに専念した。
何だか何もかもに酷く疲れてしまった。
リヴァイから、リヴァイとのことを知っている人、すべてから離れたくなった。
以前から話のあった短期留学を決めた。
手続きや部屋を引き払うことなどで何も考えないように予定を詰め込んだ。
すぐに異変に気づいたハンジさんとエルヴィンさんからハンジさんの家に呼ばれ、知っていたのに力になれなかったと謝罪された。そしてこれでいいのかと訊ねられた。
暗にリヴァイと話し合うことを勧められたが私は時間が欲しいこと、今は話すことも苦痛なことを伝え、リヴァイには留学のことをしばらく伏せて欲しいと頼んだ。
ハンジさんに泣きながら抱きしめられエルヴィンさんは本当にそれで君はいいのか?と苦しそうにしていた。
大事にしてくれる人たちも振り回して傷つけている自分が一番最低だと思っても涙は零れなかった。
大学には手続きの為だけに行き、リヴァイの目に触れないように気をつけて行動した。
たった三ヶ月で気持ちの整理がつくのかはわからない。
別れる為の時間をかけることもせずに出発の日までハンジさんの好意に甘えてしばらく過ごした。
そして、出発の日がきた。
