第1章 ”さよなら”
「カズサ!」
構内を出るまであと少しのところでリヴァイが呼び止める。
振り向きたくないけど名前をはっきり呼ばれた手前仕方ないと振り向く。
「送る」
「大丈夫、一人で帰れるよ」
「体調悪いと聞いた、途中でぶっ倒れたらどうする」
心配そうなリヴァイに何度か大丈夫と言っても送ると言って譲らない。
「悪いけど本当に大丈夫だから」
「俺がはい、そうですかと言うと思うか?」
ああ言えばこう言うリヴァイに根負けし駅まで。と妥協した自分に心の中で説教しながら二人で歩くとスっとリヴァイ側に寄せられ驚くと前から来る人とぶつからないようにだと気づき素直にありがとうと口に出す
「ふらついてんじゃねえか、危ねぇからこっちに寄れ」
急に縮まる距離に鼓動が速くなる。
多分、こういうところもモテる理由なんだと思う。
「駅までと言ったが家まで送る」
「いや、そこまでは…」
「家バレしたくないのはわかる。せめて家バレしないとこまでは送る」
「ストーカーみたいだよ…」
「ハッ。そんなことしたら余計にカズサに嫌われるだろうが。警戒するのはいいが、ここは黙って送られてろ」
強引にも程がある。でもどこか嬉しいと思っている自分がいて本当はリヴァイに惹かれ始めているのを無視できなくなっていた。
※※※
それから急速に私たちの距離は近づき研究室のみんなや友人たちからは「セット」と呼ばれるくらい一緒にいた。
「ねぇ、カズサ。リヴァイのどこがいいの。私のカズサが取られたぁ~」と大声で言ってリヴァイに蹴りをお見舞されては笑っていた。
それでも私はリヴァイに返事をしていない。
私たちは付き合っていない。リヴァイは急かすことなく待ってくれているのに答えないのは私が臆病だから。
「最近、付き合い悪いよね。今日は空いてるでしょ?」
「悪いが今日もこれからも暇はない」
「え~。ずっとあの子とばっかりじゃん」
「お前に関係ない。俺に声かけるな」
取り囲む女の子からの誘いをすべて断っているリヴァイの姿をよく見かけるようにもなった。
リヴァイのわかりにくい笑顔や優しさに触れる度に惹かれていく自分を誤魔化すのが限界になった。
「帰るぞ。送ってくから準備しろ」
もう自分に嘘はつけない。今日こそはちゃんと伝えよう。