第1章 ”さよなら”
リヴァイの想いに応えられない。ちゃんと断ろう。
でも二人きりになるのも、あの強い眼差しを向けられるのも嫌だ。
『ごめん。リヴァイの気持ちはありがたいけど受け取れない』
メール送信。これで終了。明日からどう顔を合わせればいい?下手に意識せず何もなかったように今まで通りにすればいい。
※※※
思った通りカズサは断りの言葉を送ってきた。
そりゃそうだ。当人の俺でもそう思う。
結果はわかってただろうと言い聞かせるが諦められない。
「おーい、リヴァイいるかぁ?」
玄関ドアを叩く音とファーランの呼びかけが聞こえる。
一人になりたい気もしたがドアを開ける。
俺の顔色で察したらしいファーランはニカッと笑ってコンビニ袋に入った酒を差し出した。
「玉砕か」
「玉砕だ」
「あの子、カズサちゃんだっけ。遊び慣れてる感じしないしなぁ」
「そうだな」
「で、諦められる?」
「無理だろうな」
「はは、お前ひどい顔だよ。初めての失恋だしな」
「うるせえよ」
茶化してたファーランが急に真面目なことを言い出した。
「諦めらんないなら、振り向かせるまでだろ」
「そう簡単にいくか」
「まあ、酒飲んで明日からカズサちゃんに本気だってわかってもらうまで頑張んな。あ、俺ベッドな」
「勝手に決めんな、あとカズサにちゃん付けすんな」
「うっわ、心せまっ!」
とっくに飲み終わった酒の缶を片してファーランをソファに押し込みベッドに入って寝付けないのを無理やり目を閉じて意識を落とした。
※※※
あれからリヴァイからは特に何も言ってこない。
私も普段通りを心掛け、あの日のことはお互いに納得済と安心していた。
女性関係に難ありでもリヴァイはモテる。
講義が終わると女の子達が取り囲んでいる。
チクリ。胸に棘が刺さった。私を好きと言ったのに他の子達の中心にいる。
足早にその場から離れて見えないようにした。
「ここのデータ数値の桁が間違ってるぞ」
入力した表を背を屈めたエルヴィンさんが指摘する。
「あっすみません。すぐ訂正します」
「どうした?珍しいな」
「ちょっと体調がいまいちで」
「それはいけない。帰って休みなさい」
嘘をついたのは心苦しいけどお礼を言って研究室を出た。