第2章 Lupine あなたは私の安らぎ
「僕のプライバシーが確保されてない!まるで僕が悪者のように扱われている!」
「プライバシーについては、出来ればここで話したくはなかったがな。画像は一緒にいた奴らならみんな持ってんだろ。メールに関しては送り付けられたサフィールからの提供情報だ。誹謗でも中傷でもないんじゃないか?」
コンコン、会議室の空気が濁ってきたところでグンタが入ってきた。もちろん入室許可は俺がした。
「どうぞ」
「あぁ、受け取った」
エルヴィンは驚く様子もなく泰然自若としている。
「ア、アッカーマン君、今のは?」
「今回の件とは関わりはありません」
「今のタイミングでそれはないだろう!!」
ちっ、でけぇ声でうるせぇな。
スっとグンタからの資料をエルヴィンに差し出す。
サッと目を通したエルヴィンは眉間を揉みほぐしている。
その様子に今度はなんだと営業側は探っている様子だ。
「あまり時間もない。ゼイン、君には謹慎してもらう。期間は追って知らせる。営業部長、及び課長については処分保留だ。以上。各自仕事に戻るように」
不満を言いたげにエルヴィンに詰め寄ろうとするが彼らを一瞥するだけで場を制した。
どこか不穏な雰囲気を漂わせた営業の奴らは次々と退室していく。
俺はプロジェクターを片付け、テーブルにある資料を回収していく。
「リヴァイ」
「なんだ」
「彼女は大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえな。事情聴取の報告がくる頃だ」
「そうか。しかし…ここまで大事にするとは。俺の権限では扱えないぞ」
「なら、ピクシスのじいさんか、ザックレーあたりに突き出せ、そうすりゃ社内の膿が一掃できるぞ」
「まあ、そうだが。お前はどうする?処罰対象になりかねん」
「構わねえよ」
「しかし」
「話は終いだ」
そのまま退室しフロアに戻るとエルド、グンタ、オルオが不安そうな表情でこちらを見ている。
手を払って仕事しろ、と合図をするとすぐにデスクに向き合った。
会議が終わる頃には事情聴取は済んでいたらしく、エルドは会社に戻ってきていたが、ペトラとカズサはマンションで待機しており、誰が来ようと絶対に対応するなと言いつけてある。
本当ならすぐにでも事情聴取についてもDNA結果についても聞きたかったが、会社でする話ではないし、俺自身も今は動きが取れない。