第2章 Lupine あなたは私の安らぎ
「ここに居てくれってのは言葉の通りだ。男と住むのが嫌なら俺が別に住む。家賃は心配することない」
「あの、課長?」
「だがな、それはこの件が終わってからの話だ。その間は嫌だろうが我慢してくれ」
「課長!?落ち着いてください!」
「俺は落ち着いている。金は貯まってくばかりで使い道がねえしな」
さっきまでの青白い顔が赤く色付いている。
「いつ、解決するかもわからないんですよ?!それに課長の迷惑にもなりたくないんです」
「迷惑じゃねえよ。それに変質者は退治しなきゃな」
止まっていた涙がポロポロと落ちる。
「だって、私…」
「すまない。いま話す事じゃなかった。とにかく遠慮せずに甘えてろ。お前は一人じゃねえことだけ分かってりゃいい」
カップのラベンダーを口にするとカズサも飲む。
なくなったところでカズサに眠くなくても横にはなれ、と寝室に行かせた。
蚊の鳴くような声の「ありがとう」はしっかり耳に届いていた。
俺が出勤の準備をしているとペトラとエルドが到着した。
もてなしは出来ないが、家のものは勝手にしてくれていい。と言って会社へ向かった。
普段通りに出社して仕事をこなしていると、ハンジから「たぬきどもを絞めちゃえ」と新しいデータを送ってきた。
事情聴取は午前中の予定だ。心配だが信頼出来る部下がついてる。エルドからは報告をする旨の申告もあった。
午後になるとエルヴィンから会議を始める、会議室に招集がかかった。
※※※
会議室には前回と同じメンツとゼインがいる。
ゼインは上司の顔色を伺っている。
「では、早速始めよう。まずはアッカーマン」
「仕事を他人任せにしてる不届きもののについてのデータをプリントアウトしてきた」
ペラペラと資料をめくる音がする。
「見やすいようにプロジェクターに表示する」
明かりを消してプロジェクターで細かく説明していく。
・ゼインとカズサの作成した資料の違い、カズサが作成した資料を使った時の成約率
・ゼインからカズサへ仕事を押し付けるメールの数
・ゼインの個人的な誘いの社内メールの数と日にち、そして仕事の依頼日
ハンジや他の連中がかき集めてきた情報を開示していく。
顔色が悪いゼインの様子を横目で追う。
あたふたした上司がお互いの顔を見合わせている。