第2章 Lupine あなたは私の安らぎ
ビニール袋には紙のファイル、ノートからちぎったメッセージが入っていた。
(なに?)
開けてみると隠し撮りと思われるカズサの写真が何枚も何枚も。そして赤い液体入りのペンダントトップ。
(なにこれなに、なに、なんなの)
ひらりと飛び出したメッセージは【プレゼントだよ】と気味悪い内容で恐怖をひたすら我慢した。
(どうしたらこういうときはどうするのどうしたらいいの)
パニックに陥ったカズサは一歩も動けない。
(そうだけいさつ、つうほう呼ぶ何番?)
震える反対の手でスマホを取り出し、やっと思い出した番号へ架ける。
「どうしましたか?」
相手の抑揚のない声が頭に響く。
「事件ですか?」
「へや、ドアノブにあの、」
うまく応答できないカズサに電話の相手から住所と名前を訊ねられる。
近くの交番からの警官が来るまで一人ではいないように指示され電話は切らずに落ち着いてくださいと感情のない声が対応し送り付けられたものについて話した。
その間に二人の警察官が到着し身分証を見せて不審者ではないと示してから無線機で到着した旨を報告している。
必要最低限のものを持って署で詳しい事情を話すことになった。
警察署では女性警官が同席し自宅に何かを送りつけたりするのはストーカーによくある行為で思い当たる人物、付きまとい、知らない番号からの電話などはないかと例をあげていくが全く思い当たる人物がいなくて、初めてです。と答えると被害者の多くは気づかないうちに巻き込まれ顔見知りの犯行も多々あると説明してくれた。
調書も終わり、証拠品として送り付けられたものは全て警察へ。
「見回りは強化しますが自宅は危険ですね。誰か頼れる方はいませんか?」
実家は遠方で頼れないこと、特に親しい友人もいないと俯いて答えると困った様子だ。
「解決方法ではないですが例えば目途がつくまでビジネスホテルなどに一時避難するというのはどうでしょう、勿論しっかり鍵をかけ誰かが訪れる場合には合言葉を作っておくなどで」
「はい…」実際どうしたらいいかわからない。身の安全確保するのが最優先だと言われた。
アドバイスを受け入れ、駅前にあるビジネスホテルに飛び込みで宿泊する。部屋に入ると一気に疲れがでて浅い眠りを繰り返した。