第1章 ”さよなら”
大学も研究室にもカズサは来なくなった。
まさか辞めたのか?と焦ってハンジを問いただした。
「カズサは推薦留学準備で忙しくてロクデナシに会う時間なんてない。そもそも会う資格ある?」と鼻で笑った。
エルヴィンにも確かめた。
苦虫を噛んだような表情でカズサは短期留学とはいえもう出発日も決まっていることを知らせた。
俺が他の女と遊び始める少し前に留学の話はきてたらしくだいぶ迷っていた様子だったが突然、留学を決め準備も手続きも追われるように済ませたこと。
「もう手遅れだよ。リヴァイ。残念だ」
エルヴィンの言葉が頭の中でずっと回っている。
行ってしまう。責めることも罵ることも、別れを告げることもなく。カズサは遠くへ行ってしまう。
最後に見たカズサの姿が忘れられない。
俺が悪い。歪んだ愛情確認もバレなきゃいいとしか思わなかった馬鹿野郎だ。
カズサが愛想つかすのも離れていくのも当たり前だ。
あんなに大事にしたいと願ったのに結局やった事は傷つけるだけ傷つけた。
二度とあの笑顔は向けられることはない。
そうだ。何もかもが自業自得だ。
※※※
リヴァイの噂は大学に入って少し経つ頃には聞いていた。絶対に彼氏にはしたくないタイプだなと思った。
噂もすぐ忘れた。何度か同じ講義にいたけど私は自分の夢を叶える以外に興味はない。
「リヴァイだ」
不機嫌そうな名前だけの自己紹介。
この研究室は人気があるけど内容も濃い。
それだけじゃなくて所属している先輩方も癖が強くどうやら同期もそうらしい。
「やあ、初めまして!私はハンジ・ゾエ!よろしくねぇー!」
「エルヴィン・スミスだ、困ったことや浮かんだアイデアはどんどんだしてくれ。よろしくな」
その他にもナナバさん、ミケさん、とにかく人目を引く人達だ。
歓迎会ではハンジさんが騒ぎリヴァイに絡んで蹴られるというヒヤヒヤする場面もあった。
オン、オフの切り替えがきっちりしていて、研究に入れば真剣に、真摯に取り組むみんなに影響を受け充実していた。
実験レポートや研究データを纏める時、だいたいリヴァイと一緒でちょっとだけ話したりすると無口そうなのに結構しゃべるのに驚いた。
女の子達からは羨ましいとか気をつけなよ。と言われ、そういえばと思い出したけどそれだけだった。