第1章 ”さよなら”
それからは恋人として同じ目標を持つ相手として、多くの時間を過ごした。喧嘩もしたし嫉妬も経験した。
恋愛で振り回されるやつの気が知れないと思ってた俺は過去になった。
カズサに接する俺の態度に変わったと思うやつと、一時的なもんだと言う奴もいた。
でもカズサは俺を信じてくれたし俺もカズサの笑顔も怒った顔も何もかもが好きで仕方ない。自分にこんな感情があったなんて俺が一番信じられなかった。
以前と変わった俺をファーランも驚きながら恋愛偏差値の低い俺に普通の付き合い方を教えたりと世話を焼いた。
きっかけは頭数合わせの合コン。
よくあるドタキャンで断り続けたが何度も頼むと言われ今回限りと釘をさして渋々了承した。
他大学の猫なで声で話す女達。こちらの大学名を知ると「すごーい、頭良いんだあ」と頭の軽そうな話し方
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酔ってはいなかったし女が気に入った訳でもない。
そういう雰囲気になって簡単に持ち帰れそうな女だな。そう思った。
結果から言うと俺はその女を抱いたし、隣で寝ている女の顔を見て後悔しカズサへの罪悪感でいっぱいになった。
連絡先は交換してない。その場限り。バレなきゃカズサは傷つかない。
だが、俺は何度も同じことを繰り返した。
その場限りの女は増え、罪悪感は薄れ背徳感に溺れた。
ファーランは大声で怒鳴ったし、ハンジは軽蔑の眼差しを向けエルヴィンは警告した。
カズサはもう知ってる。
ヤケになったのかもしれない。試したのかもしれない。
あんなに大事にしたいと、幸せにしたいと願ったはずの俺は別れを切り出さないカズサは俺を愛してるからだ、と言い聞かせ自惚れた。
そんなはずないのに。
カズサはいつも通りに話しかけ、笑っていた。
なあ、知ってるんだろ。わかってんだろ。
無性に腹が立った。知らないふりのカズサにも自分にも。
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ぽっかりと空いた時間にどうでもいい女と街を歩いていた。女はベタベタと腕を絡ませ、くだらない話を続ける。
すれ違う人のなかにカズサが俺達の真正面に立ち尽くしていた。
その瞳に光はなく無表情でさよならと小さく言葉にしてくるりと来た道を歩いていった。
自分の体じゃないみたいに動かない足は追いかけることもせず、カズサの名前を呼ぶことさえできなかった。