第1章 ”さよなら”
カズサからの”さよなら”は二度。
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大学に入って周囲が馴染み始めた頃、俺は大学生活に馴染めなかった。受験勉強から解放された特有のノリもウザいだけとしか思わなかった。
「ねぇ、今日の講義でわかんないとこあってぇ」
猫なで声の女が勝手に擦り寄ってくるが面倒くさい。
別に今まで女に困ったことはない。その時の気分次第だったし、恋愛で泣いたり右往左往する奴らの気持ちもわからない。
「なあ、リヴァイ。4限のノート貸してくれよ」
「あの娘、可愛くね?」
講義後や学食でやたらと話しかける馴染みのファーランは対照的に愛想も良くて友人も多い。
「おい、ファーラン。講義受けてんならわかるだろ。わかんねえなら調べるなり自分でなんとかしろ」
ぶっきらぼうに答えてもこいつには効かないのは知ってる。
「お礼に女の子紹介するからさ!相手もノリノリ」
「知らねえ。興味ねえな」
「おっと、彼女でもできたか?」
「そんなもん、いねえよ」
冷やかすファーランを睨んで次の講義の準備をする。
カズサと出会ったのはたまたま隣の席にいたのがきっかけだ。
講義が終わったらすぐに立ち去る女。
いくつか同じ講義を取ってるらしいが隣になったのは一度だけ。それだけ。
二度目の春。俺も要領よくなってそれなりに付き合いも増えた。
付き合いが増えると女も寄ってきた。これまでと同じで気分次第は変わらず、しつこい女や彼女にしてなんて言ってくると潮時で冷たくあしらっては次の気分次第の女。
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学年が上がればその分やることは増えていく。
実験、講義の内容は濃くなり他の学生もついてくために本腰を入れ始めた。
俺は自分で言うのもなんだが成績は上位にいたし、カズサもそうだ。
研究室はカズサも同じで研究マニアのハンジ、切れ者のエルヴィンと賑やかで研究もやりがいを感じた。
カズサは意見ははっきり言うし熱心で前だけを見据えて進む女だった。その頃には俺はカズサを意識し始めてた。
俺の女性関係は思ったより知ってる奴も多くカズサは当たり障りなく接していたが徐々に距離は近くなって俺は初めて恋に落ちた。
これまでの女はすべて手を切って告白なんてむず痒いもんをして返事はかなり待たされたが望んだ返事を得られ、正直浮かれてたのを覚えている。