第1章 ”さよなら”
「もう少しで到着だな」
『順調に行けば、あと30分くらいかな』
スマホをブルートゥース接続してエルヴィンとハンジ達は話していた。
「ハンジ、お前のわがままもこれきりだぞ」
『わーかってるよ、みんなに柄じゃない世話焼きを頼んでるのは十分わかってる』
「…あの二人のしこりは根深いな」
『本当だね。ほっとくだけほっといたツケがきてるよね』
「ナナバ、ハンジが暴走しないように見張ってくれよ」
『ハイハイ、ミケ、その為に私は呼ばれているからね』
※※※
宿に着くと中居さんの案内を受けながら部屋に腰を落ち着ける。
「温泉を堪能するぞぉ!!」
疲れを知らないハンジさんに引きずられる様に荷ほどきもそこそこに自慢だというお湯に浸かる。
今日ずっと続いている緊張がスルスルと解けていく。
「ハンジさん、ナナバさん。」
こどものようにお湯の掛け合いをしている二人に不機嫌に声をかけるとキョトンとした顔がこちらを見る。
「わざと、ですよね?」
「え~、よくわかんないなぁ」
ナナバさんは手を口元に当てて笑いをこらえている。
「カズサ、いい機会だと思いなよ。せっかくの小旅行、楽しまなきゃ」
ブスっとしているとナナバさんがパシャとお湯をかけてきたので反撃するとハンジさんも加わり学生のノリのせいで逆上せそうになる手前で部屋に戻った。
予約したハンジさんは個別に部屋を取っていて食事は温泉街に足を伸ばそうと張り切っている。
団子になって見慣れない街の匂いを感じながら、あちらこちらへと見ていく。
気になったお店に入って食事やお酒を楽しんで帰るころにはハンジさんはいつもより陽気に足取りはふらふらになりながらも二次会だぁと叫んでいる。明日を考えると切り上げたほうがいいがこうなったハンジさんは止められない。
「すみません。明後日はオペが入っているので先に戻ります」
「えぇ~そんなっ!」
「仕方ないだろう。ハンジ。さあ行くぞ」
「一人じゃ危ないからミケついていきなよ」
「もう、大丈夫ですから楽しんできて下さいね」
なんだかんだ言いながらもハンジさん達と別れた。
にぎやかな街から宿へと来た道をしばらく歩いていくと後ろから人の気配を感じる。歩くペースも一定。
グルグルと回る嫌な想像を変える為にくるっと振りかえる。
「リヴァイ?」