第1章 ”さよなら”
「いや、アッカーマン先生には恥ずかしいところを見られてしまいました」
「そう思うなら院内で妙なことはしないほうがいい」
嫌みな言い方だが、カズサに言い寄っているレーンは気に食わない。
「そうですよね。わかっているんですが接点もあまりなくて、なによりサフィール先生のガードが固くて…」
少し話しただけだがレーンという男はストレートに気持ちを表せる男のようだ。
「そうか」
励ます気もないので、そのまま立ち去ろうとするとレーンは俺を呼び止める。
「なんだ、医局に戻りたいんだが」
横目でレーンを見るとオドオドしている。
今の俺はあまり機嫌がいいとはいえないから仕方ない気もする。
「あのぉ、確かサフィール先生と同じ学部とお聞きしたことがあるんです。一度でいいのでサフィール先生を食事に誘って頂けませんか?」
「あ?」
「も、もちろんアッカーマン先生もご一緒に。」
なるほど、俺をダシにカズサと近づきになりたい訳だ。
だが、残念だな。
「悪いが俺とサフィールは同じ学部ではあるが、食事に行く時間はない」
がっくりと来ているレーンに協力してやる義理はない。
「悪いな」
レーンを残して自分の医局に戻る為にエレベータに乗り込んだ。
※※※
医局に戻って明日の仕事準備を整えて職員用出入口から帰宅する。
手洗い、うがいをしてから楽な部屋着に着替えてスマホを確認する。
ハンジからのメッセージや着信が何件もある。
エルヴィンに釘をさしておいたが無駄だったようだ。
メッセージは、俺が参加するのを確認する内容やらで何件も送る内容ではない。
その時だった。急に着信があり、癖で通話にしてしまっていた。
「はぁ~い!リッヴァ―イ。ご機嫌いかが?」
「疲れたところに急に電話してきたやつのせいで余計疲れたな」
「ハハハ、相変わらずそうで安心したよ!参加するって聞いて確認と思ってさっ」
「何年経ってもお前のウザさは変わらねえな」
「ウザいってひどいな。いろいろ企画してんのにさ」
「楽しめるとこにしろよ?間違ってもお前の趣味に走るな」
「今回はそれはなし。後、カズサも絶対参加にしてあるからね!!」
世話焼きなのは大学時代から何も変わっていないようだ。
言いたい事を言うだけ言って通話は切れた。