第1章 ”さよなら”
確かにカズサ以外の今まで出会った女たちは大抵見た目で近づいてたし、俺もそれはそれでよかった。
でもカズサにあってからは全員が打算的な女ばかりじゃないと知った。(思いたくねえがハンジもか)
だから、カズサと別れてから、どんないい女がいても俺はそんないい女に触れてはならねえと思っちまうし傷つけない自信もねえ。
それに今は仕事が充実している。だから割り切った相手がちょうどいい。
「ファーラン、俺は帰るぞ」
途端にエッーと非難の声があがるが知るか。
「オンコールかかった」
「それじゃ仕方ない」
肩を竦ませるファーランにまたな。と言ってその場を離れた。
一滴も酒を飲んでなかったこその言い訳だ。
オンコールなんて嘘だ。
店を出て手にしたスマホから目的の人物の番号をタップする。
何度目かの呼出音の後に相手が出ると場所と時間を決め通話は終わる。
このくらいの気軽さが俺には似合ってる。
※※※
「はぁ、いつもだけど突然の連絡はどうなの?」
「なら、電話出ないか断ればいい」
「まあ今日は一人だったしシタかったからいいけどね」
情事の後、苦情を言う相手に俺はさっさとシャワーを浴び服を着始める。
乱れたシーツにくるまってる女にもシャワー浴びてこい。といつもと同じことをいうが反応はない。
「あのさ、今夜であなたとは終わりにする。うわ言で誰か呼んでる男なんていらないし」
は?俺が?誰を呼んでるって?
それが顔に出てたのか、マジ、気づいてないの。と言いながら長い髪を片側に寄せる。
「呼んでるの無意識だったのかー。余計タチ悪いよね」
「…俺はなんて呼んでんだ」
言わなきゃいけないの〜と口を尖らしながらも教えてくれた。
「カズサって。いくらセフレ相手でもふざけんなってなるでしょ。体の相性悪くないから黙ってたんだけどね。お互いの連絡先、ここで消して終わりね」
スマホを出して俺の連絡先を消した女は俺にもすぐ消してと操作を確認した。
シャワー浴びてくるわー。と間延びした声で浴室に入っていく女。
ガツンと頭を鈍器で殴られたような俺を尻目にシャワーを終え服を着た女はバイバイ、と軽く俺を小突いてホテルから出ていった。
その後、自宅マンションにどうやって帰宅したかよく覚えていない。