第1章 ”さよなら”
エルヴィンさんは国試、院試をクリアしてミケさんも国試クリアして卒業していった。
そうしてハンジさん、モブリットさんも。
お世話になったみんなは晴れやかな笑顔でそれぞれの道を進んで行った。
寂しいなんて浸っている暇もなく時間と卒論、国試、今度は自分が追いかけられる。
睡眠時間は良くて三時間。目の下の隈は化粧でも誤魔化せない。そもそも化粧に時間かけるなら寝ていたい。
毎日が飛んでいく。一日は24時間だし一年は365日のはずだ。時間感覚が狂ってる中、とにかくがむしゃらに過ごして卒業していった先輩たちと同じ苦しみを味わう。
そして卒業できること国試をクリアしたことに安堵しつつ、これからが大変だと気を引き締めた。
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本当の苦難が待ち構えていると覚悟して予想もしていたのに。
研修医になってからが本当の試練だと思い知った。
むしろ人の命がかかってる分、精神的にも体力にも限界に挑んでいるのに近い。
なんとか食らいついて二年。
新米なのは変わりなく女医というだけで患者の担当を変えてくれ。という要望(不信感)にも慣れた。
私は小児外科を目指していた。
時間との闘い、長時間のオペにどうしようもない体力差や指導医から、別の道をと助言も頂いた。
でも私は人が思うよりも頑固なのだ。
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カズサが外科を目指しているのは付き合ってる時から知ってた。
俺もそうだし、一口に外科といっても多岐にわたる。
そういう意味でも同じ目標を持っていた。
俺が選択し受け入れられたのは心臓だ。
勿論、ひよっこは経験豊富な医師の補助の補助、時には見ているだけも多かった。
それでもへばっている暇なんざない。
同じ大学病院でもカズサにばったりなんてこともなく滲むような努力をし半人前から一人前になった頃にはカズサとのことは半ば思い出になりつつあった。
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「お医者さんなんですか!?わぁ凄いです!」
医者狙いがミエミエの女を紹介してくるファーランには呆れるがこいつにはいつも世話になっている。たまの休みは掃除に当てたいが仕方がない。
「おい、リヴァイもっと愛想よくしろよ。」
「無理難題押し付けるな」
「いい加減に忘れろよ、せっかくいい女揃えたんだぞ?」
いつまでも特定の女を作らない俺を過去に縛られているとファーランは勘違いしてる。