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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第14章 聲の向こう〈煉獄杏寿郎〉




「いや、檜原さんの愛犬についてお伺いできて良かったです。しかも同じ漢字とは奇遇ですね。俺も嬉しいです。よかったらまた…お話の続きを聞かせてください」

「はい!是非その時はまた…!今日は本当にありがとうございました!では、失礼致します」

かれんはにっこり笑い、オフィスを後にした。


(よく笑う明るい人だな。…また会えるだろうか)


杏寿郎は小さく芽生えたこの気持ちをそっと胸に閉じ込め、デスクに戻った。


・・・


「杏〜〜〜!!ただいまただいまっ!!」

「ワンワン!!」

かれんはマンションの玄関を開けると、廊下から走ってきた杏を思いっきり抱きしめた。

「いつもお留守番ごめんね。今日もありがとう。大好きなさつまいもを買ってきたよ!蒸して食べようね!」

「ワン!!」


かれんは大学卒業後、地方から都内に就職を決め、一人暮らしを始めた。その2年後に、妹も都内で就職が決まり一緒に暮らすことになった。始めの頃は互いに多忙な日々を過ごしてきたが、最近になって漸く余裕も出てきて、落ち着いた暮らしになってきた。妹は基本在宅勤務だった。そして二人とも恋人はナシ。趣味も合うので、週末はよく二人で出かけた。そして姉妹揃って犬が大好きだった。
ちょうど4年前の杏子の花が咲く頃、友人の家の愛犬が子犬を産んだのだ。早速妹と一緒にその子犬を見に行くと、あまりの可愛さに瞬く間に二人は心を奪われた。二人はその子犬を飼うことを決め、ペットOKなマンションに引っ越しを決めたのだった。
杏が小さかった頃は、在宅勤務の妹が面倒を見てくれた。そしてつい先日、夢だったデザイン事務所を立ち上げ、無事に独立することができたのだ。妹は近くのマンション(自宅兼オフィスにしている)に最近引っ越してしまったので、日中は杏は一人でいることが多くなったが、時々杏の様子を見にきてくれていた。


 “杏のために、何がなんでも定時!”


杏を飼い始めてから、かれんの目標はこれだった。かれんは杏が大好きだった。



「こら!杏!鞄の中を漁っちゃだめ!」

杏はかれんの鞄に頭を突っ込んで、ゴソゴソと何やら楽しそうだ。

もう!と言いながらかれんは杏を抱き抱えると、その口にはパスケースを咥えていた。

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