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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第14章 聲の向こう〈煉獄杏寿郎〉




「では、確かに受け取りました」

「本当にありがとうございます!宜しくお願い致します。あ、そうだ、私の名刺を…」

かれんはパスケースを取り出し、杏寿郎に名刺を差し出した。

「順番が前後して大変申し訳ありません。私、株式会社△△の営業をしております檜原かれんと申します」

「こちらこそ、その場で名乗り出てしまい、とんだ失礼を…。開発部におります煉獄杏寿郎と申します」

二人は名刺を交換し合った。するとかれんは、杏寿郎の名刺をまじまじと見つめていた。

「…あの、何か?」

「あっいえ!ごめんなさい!杏寿郎さんのお名前の漢字、“杏”とお書きになるんですね!…とっても、素敵だなあって…」

「そうですか?ありがとうございます」

杏寿郎は思わず頬が緩んだ。かれんは大切そうに杏寿郎の名刺をケースにしまった。

「すみません!なんだか長居をしてしまって…。宇髄様にも宜しくお伝えください!今日はありがとうございました!」

「こちらこそありがとうございました。お気をつけて」

かれんは、ぺこりと頭を下げて出口へと向かった。するとかれんのパスケースから何かがひらりと落ちた。杏寿郎は急いでそれを拾い見てみると、それは写真だった。明るい毛並みをした子犬がすやすやと眠っている愛らしい一枚だった。

「…! 檜原さん!」

「??」

かれんがくるりと杏寿郎に振り返る。

「今、これがパスケースから…!」

「…!杏(あんず)…!ありがとうございます!!すみません、拾っていただいて…」

杏寿郎はその写真をかれんに手渡した。

「杏…というお名前なのですか?」

「そうなんです!さっき杏寿郎さんのお名刺を拝見した時、杏と同じ漢字だ…!となんだか嬉しくなってしまって…」

「そうだったのですね。最近飼い始めたのですか?」

「いえ!もうすっかり大きくなっているのですが、この写真がお気に入りで…!もちろん今もとっても可愛いんですっ!」

嬉しそうに話すかれんに、杏寿郎も笑みが溢れる。

「犬種は…?すみません、そういうのに疎くて…」

「ウェルシュ・コーギーです!今年4歳になる女の子で…ボール遊びが大好きなんです!公園で良く…ってすみません、こんなこと…」

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