第12章 陽だまりの君を〈時透有一郎〉
ああ 俺は
この笑顔が 大好きで
前から ずっと 大好きで
今は 自分に
微笑んでくれていて
これからも この笑顔を見ていたい
ずっと
かれんの傍に いたい
「かれん。俺、…かれんが、好きだ。ずっと前から。初めて会った時から、ずっと」
有一郎の瞳が夕陽に輝き、かれんの心にその想いが響く。
「…有ちゃん。私も、有ちゃんのこと、好き。ずっと大好きだったよ」
泣きそうに笑うかれんに、有一郎の瞳も揺らいだ。
「…ふふっ、両想い、だね」
嬉しそうにするかれんの手を、有一郎はぎゅっと握り返した。
「…それからさっ」
「ん?なぁに?」
「その呼び方…っ」
「ああっ!ごめん!私ったらまた…っ」
「そのっ、全然、いつでも、呼んでいいからっ」
「…え…、でも…っ」
「な、何?!何か不満でもあるわけっ?!」
「う、ううん!全然!…嬉しいなって」
「〜〜〜…っ!っさ、帰るよ!!」
かれんの笑顔にとことん弱いと思いながらも、その微笑みに有一郎の口元も思わず緩んでしまう。
「う、うん!!」
有一郎にぐっと手を引かれて、かれんはその後ろを歩いた。
「ねえ、有ちゃん?」
「何?」
「来週、また銀杏並木に、行かない?」
「…別に、いいけど」
「…あんまり…行きたくない…?」
「ち、違う!…俺もそのっ、誘おうと思ってたから…っ!」
「えっ!本当?嬉しい!じゃあ来週の水曜日!どうかな?」
「分かった。…5限終わったら、教室まで迎えに行くから」
「うん!ありがとう!」
夕焼けのせいもあって、かれんの頬が一段と鮮やかに赤く染まる。やっぱりこの笑顔が好きだと、有一郎は思った。かれんが隣にいてくれるだけで、こんなにもあたたかい気持ちになることに、幸せを感じずにはいられない。
「かれん」
「ん?」
「…俺の手、絶対離すなよ!」
「…! うん!絶対離さない!」
かれんの陽だまりのような笑顔は、これからも有一郎の隣で輝き続ける。そしてそれは、どんな時も有一郎をやさしく照らす道しるべになってゆく。
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