第10章 神様からの贈りもの〈煉獄杏寿郎〉
二人は笑顔で見つめ合い、杏寿郎は夕焼けに染まった小夏の頬を愛おしそうに撫でた。
・・・
小夏は子猫を抱えて、杏寿郎と一緒にこむぎの夕方の散歩の為に、先程の公園に来ていた。子猫を拾った木の辺りを見て回るも、母猫の姿は見当たらなかった。
「…おかあさんねこさん、いないね…」
「うむ…」
途方に暮れていると、こむぎの耳がピンと立った。ワンと吠え、小夏と杏寿郎に振り返ると、こっちだと言わんばかりにぐいぐいと先に進んで行った。
「こむぎ…!?どうしたっ…?!」
杏寿郎はこむぎに引っ張られるようにして、その先へと進んでいく。小夏も必死にその後を追いかける。
こむぎの足が止まり、茂みの奥をじっと見つめていた。小夏と杏寿郎もその視線の先を見ると、そこから現れたのは真っ白な成猫だった。その猫は脚先だけが靴を履いたように黒い毛で覆われていた。小夏は、その猫が子猫の母親だとすぐに分かった。
「あ…!あのねこさん…!」
小夏がそう言うと、子猫は小夏の腕からぴょんと飛び出し、その猫の元へ駆けていった。子猫は甘えるように、その猫に体を擦り寄せていた。
杏寿郎は小夏の横に腰を下ろし、肩をそっと抱いた。
「きっと母猫だな。無事に再会できて良かったな」
「うんっ!!」
小夏と杏寿郎はにっこりと笑みを交わす。
母猫と子猫は小夏達を見つめると、二匹揃ってニャアと鳴き、そのまま茂みの奥に姿を消していった。
「さあ、小夏、家に帰ろう。お母さんが待っているぞ」
「うん!」
こむぎも嬉しそうにしっぽを振っていた。
杏寿郎は小夏の手を取り、家々から漂う夕餉の香りに包まれながら家路についた。
・・・
家に戻るとかれんがキッチンで夕飯の支度をしていた。
「おかあさん!」
小夏はかれんに飛び込むように抱きついた。
「小夏!おかえり!」
「かれん…!体調は大丈夫か?」
「うん!今日はありがとう。お陰様で大分いいみたい!」
「そうか!それは良かった!でも無理は禁物だぞ」
「うん!」