第10章 神様からの贈りもの〈煉獄杏寿郎〉
小夏はベッドで横になっているかれんに抱きつくと、きがえてくる!と部屋を飛び出していった。
「かれん、行ってくる」
「うん…色々任せてごめんね」
「案ずるな。朝食も俺が作る。今日は一日ゆっくり休むといい」
「うん、ありがとう」
杏寿郎はかれんにそっと口付けをして部屋を後にした。
・・・
今日は朝からどんよりと曇っていた。
こむぎのリードを小夏と杏寿郎は一緒に握る。曇り空などお構い無しに、小夏はぐんぐんと前のめりに歩く。こむぎも嬉しそうにしっぽを降って歩いていた。
「おとうさん、こうえん、いく?」
「ああ、そうだな。公園を一周して、家に戻ろうか」
「うん!!」
近所の公園は犬も一緒に入れた。ドックランもあり、時々そこでこむぎを放してあげることもあった。
しかし公園に到着するも、今日はこの天候のせいなのか、公園には殆ど人がおらず、閑散としていた。
「きょう、だれもいないね…」
「小夏、雨が降ってきそうだ…。今日は少しだけ歩いたら家に戻ろう」
「…はーい」
少し残念そうに返事をする小夏の頭を杏寿郎は撫でると、小夏の前に腰を下ろした。
「小夏、帰ったらお父さんが小夏の大好きなホットケーキを作ってあげよう」
「…ほんと!?」
「ああ、約束だ」
「おとうさん、だいすき!」
小夏は杏寿郎に抱きつくと、杏寿郎もぎゅっと小さい体を抱きしめた。
その横で、クーンとこむぎが鳴き、何かをねだるように杏寿郎を見つめていた。
「勿論、こむぎにもだ!」
「ワン!!」
「おとうさん、小夏もおてつだいするね!」
「ああ、ありがとう!」
えへへと照れる小夏に、杏寿郎は溢れだす愛おしさごとその小さな手をぎゅっと握った。
・・・
三人は公園の歩道を歩いていた。そろそろ雨が降り出しそうな空模様を見て、杏寿郎は小夏に引き返そうと言い出そうとしたときだった。
道の脇の木の上から、ニャーと鳴き声が聞こえた。
小夏と杏寿郎はその鳴き声の方を見ると、木の枝にちいさな子猫が怯えるようにしがみついていたのだ。