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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第7章 どうか、届いて〈不死川実弥〉




・・・

そしてとある居酒屋の座敷にて、実弥の送別会が行われていた。

営業部だけでなく他部署の人も駆けつけ、誰もが実弥との別れを惜しんでいた。かれんの隣のテーブルで男性社員達と楽しそうに最後のひとときを楽しむ実弥。その表情は笑ってはいるものの、少し物悲しげに見える。酒に酔った上司や後輩達はおいおいと泣き叫び、実弥に抱きついている。誰もが実弥のことを慕っており、その人望の厚さは計り知れない。かれんはそんな実弥を愛おしく思いながらも、明日からはもう実弥に会うことができなくなると思うと、急に寂しさが込み上げてきた。

(…泣いちゃだめ!笑顔で見送るって決めたんだから…!)

かれんは残るビールを飲み干し、涙を酔いに誤魔化した。


・・・


皆の終電も迫り、自力で帰れない酔った人達をかれん達はタクシーに乗せ帰宅させた。二次会に行こうとかれんと実弥は同僚から誘われたが、実弥は荷造りがあるからと皆を何とか説得させていた。かれんもどうしても実弥と一緒に居たかったので、当たり障りのない言い訳をして、二人で駅に向かった。


「…最後まで色々面倒かけちまったなァ」

「全然です!大丈夫ですよ!皆、本当に実弥さんのことが大好きなんですね…っ!やっぱり実弥さんはすごいです!…憧れです…っ」

「…バッ…っ、何酔ったこと言ってンだよ…」

「酔ってなんかないです、本気です!…実弥さんは、本当に…私の、憧れ だったんですから…っ」

そう話している途中から、かれんは涙声になってしまった。実弥はかれんの頭を、そっと撫でてくれた。

「…いつでも連絡していいからなァ。仕事でも、…プライベートでも」

「…っ!…します!ありがとうございます!嬉しいです!…さ、実弥さんも、何かあれば…、私…お話、いつでも聞きますね!」

もうかれんから涙は消えていた。にっこりと笑うかれんの笑顔に、実弥も自然と笑みが溢れる。

「ありがとなァ。…じゃあ、またな。体にはくれぐれも気ィつけろよ」

「はい!実弥さんも!…実弥さんのご活躍をお祈りしています」

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