第6章 私の王子様〈煉獄杏寿郎〉
「〜〜〜〜〜っ!」
かれんの心臓は限界まで高鳴る。どんどん耳が熱くなり、収まったばかりのかれんの頬の赤みは再び火照り始めた。
「…杏寿郎〜…、もう〜〜…っ」
むうっと照れながら杏寿郎に振り返るかれんの頬を、杏寿郎は包み込むように両手を添えた。
「かれんがあまりにも可愛らしいので、つい。すまなかった」
幸せそうに微笑む杏寿郎に、かれんはもう何も言えなくなってしまう。こんなにも素敵な人に出会えてなんて幸せなんだろうと、思わずまじまじと杏寿郎を見つめた。
「…ん?どうかしたか?」
「…んーん、なんでもないっ!」
「何だ!気になる!かれんのその顔は何か言いだけな顔だぞ!」
「もうっなんでもなーいっ!ご飯にしよ!」
どこまでも自分のことを想ってくれる杏寿郎に嬉しくも、恥ずかしさのあまり素直になれないかれんは、テキパキととテーブルに夕食を並べた。
・・・
夕食を終えて、杏寿郎が皿洗いをしてくれている横で、かれんは湯を沸かし紅茶を淹れていた。
「ケーキは何にしたの?」
「それは開けてからのお楽しみだ!」
「え〜〜なんだろうっ!」
皿洗いを終えた杏寿郎はかれんが淹れた紅茶と、皿とフォークをテーブルに運んでくれた。かれんも冷蔵庫からケーキの入った箱を取り出し、テーブルに座った。
「開けていい?」
「ああ!勿論!」
かれんはわくわくしながらケーキの箱を開けると、そこには苺が乗った小さなホールのショートケーキが入っていた。しかもよく見ると何やらメッセージプレートも乗っているようだった。
(…えっ…?!)
かれんはどきどきしなからそのプレートの文字を見た。
「…“いつも、ありがとう”…?」
「…いつもありがとう、かれん。かれんと毎日一緒に過ごせて、俺は心から倖せだ。…愛している」
「…!!」
かれんは自分が恥ずかしさを理由に、杏寿郎へ素直に想いを伝えることができていないことに、申し訳ない気持ちが込み上げてきた。
「…私も杏寿郎と一緒に過ごせて幸せ。毎日ありがとう。…私、杏寿郎に、ありがとうと大好きってあまり言ってなかったよね。…ごめんね…」