第6章 私の王子様〈煉獄杏寿郎〉
「ただいま!今戻った!」
元気の良い杏寿郎の声が玄関に響いた。かれんはキッチンのコンロを止めて、杏寿郎を迎えにいった。
「お帰りなさい!今日は早かったのね!」
「ああ、今日は残業せずに帰ってきた!…これをかれんに」
「…!!これってもしかして駅前にできたばかりのケーキ屋さん!?ずっと気になっていたの!」
「そうか!ならよかった!食後に食べよう」
「……あれ、もしかして今日って何かの記念日だったりした…?」
「いや?特にそういうつもりではなかったが…。でも俺にとってかれんと過ごせる毎日が特別だがな!」
そう言うと杏寿郎はかれんの顎をくいっと手で自分の口元へと近づける。突然その紅い瞳がかれんの眼前に迫り、どきりと胸が鳴った。
「〜〜〜っ!!ほ、ほら!お風呂湧いているから!先入ってきちゃって!」
かれんは顔を真っ赤に染めて、どきどきと鳴る胸を抑えながらキッチンに戻っていった。
(かれんの照れる姿はいつ見ても愛いな…)
杏寿郎はかれんの後ろ姿を愛おしそうに眺めながら、バスルームに向かった。
・・・
(…杏寿郎って突然あんなことするからほんと心臓が保たない…)
杏寿郎が買ってきてくれたケーキの箱を冷蔵庫にしまい、かれんは未だ引かない頬の赤みを抑えながら、夕飯の支度の続きをしていた。
ピッピピ〜♪
炊飯器から炊けた音が鳴り蓋を開けると、白い湯気がふわりと立ち込め、釜の中には角切りに切った鮮やかな黄色いホクホクとしたさつまいもが白米の合間に散りばめられていた。
(いい匂いっ!)
かれんは茶碗に出来立てのさつまいもご飯を装っていると、風呂から上がった杏寿郎がキッチンにやってきた。
「よもや!今日はさつまいもご飯か!」
「うん!スーパーで美味しそうなさつまいもを見つけたの!」
かれんは鼻歌交じりでおかずの盛り付けをしていると、杏寿郎に後ろからぎゅっと抱きしめられた。風呂上がりの杏寿郎からふわりと漂う石鹸の香りがかれんの鼻腔を擽る。
「…俺の妻は世界一だな」
杏寿郎の甘く艶やかな声がかれんの耳元に響く。