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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第5章 ロータリーの歌姫〈煉獄杏寿郎〉




杏寿郎は静かにスマホを耳から離した。
かれんは見事に夢を叶えた。そしてどんどん有名な歌手になっていくのだろうと杏寿郎は嬉しくも、何処か寂しくもあった。もう今までのようにかれんには会えなくなってしまうだろう。でもきっとかれんはその素晴らしい声と歌唱力で、その業界で活躍していくに違いない。

杏寿郎は熱くなる目頭を抑え、店内へと戻っていった。


・・・


翌月、かれんは正式に“かれん”の名で歌手デビューを果たし、その歌声はもちろん、惹きつける歌唱力と持ち前の凛とした容姿から、どの世代からも愛される国民的シンガーソングライターとして活躍し、その名は瞬く間に広まっていった。

どの業界からも注目の的になりつつも、雑誌やメディアにはほとんどその姿を現さず、謎に包まれたシンガーソングライターとして更に人気を高めた。そしてシングルがリリースするたびに、人々の心を射止めていったのだった。


・・・


それから1年後の春。


「なあなあ!!昨日リリースした“かれん”ちゃんの新曲聴いた!?」

杏寿郎が職員室に出勤するや否や、天元がCDを持って詰め寄ってきた。かれんの新曲『さくらいろのきみ』は発売当日で1万枚を超えるヒットを叩き出していた。

「いや、まだだが…っ」

「はぁ!?マジ!?…コレ、ぜってー煉獄のこと書いた歌詞だぜ?」

「…!!」

天元の言葉に杏寿郎は耳を疑った。

もう杏寿郎はかれんとは一切連絡を取っていなかった。デビュー後、数回やりとりをしたが、かれんの創作活動に影響を与えたくなかっのだ。それにもうかれんは雲の上の人だ。杏寿郎は自らかれんとの連絡を経っていた。

天元はポンと杏寿郎の肩を叩き、自分のデスクに腰掛けた。

「マジでかれんちゃんの才能すげぇよなぁ!作詞作曲して自分で歌って…派手にカッコ良すぎんだろ?!」

「…ったく、朝から騒々しいったらねェな」

「不死川も聴いたかよ!?“かれん”の新曲!!」

「ア"ァ?ンなもんとっくに聴いてらァ。下のヤツらが買ってきて昨日散々聴かされてよォ」

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