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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第5章 ロータリーの歌姫〈煉獄杏寿郎〉




もし困ったことがあったら連絡して欲しいと、杏寿郎は自分の連絡先を渡し、かれんは嬉しそうにそれを受け取ると、ありがとうとにっこりと笑った。
かれんの家に着くと、かれんはありがとうと杏寿郎の耳元で囁き、その手をそっと解いた。そしてこっそりと台所の裏口から家に入っていった。


かれんと杏寿郎の初めてのデートはまるで夢から醒めていくように、穏やかな余韻だけを残していった。明るい朝日はゆっくりと杏寿郎を照らした。

・・・

その日から、気付けば数ヶ月が経っていた。

かれんとはあれから一度も会えていなかった。連絡も殆ど来なかった。杏寿郎はかれんに何かあったのではないかと心配になり、時々あのロータリーに出向いた。でもかれんは現れなかった。連絡を取っても、当たり障りのない返事だけが返ってきて、杏寿郎は少し寂しくもあった。でもかれんは自分の夢に向けて、一生懸命に奮闘しているんだと杏寿郎はかれんを信じていた。


「煉獄よぉ。寂しそーな地味な顔してんなぁ?」

気付くと目の前に天元の顔があり、杏寿郎は思わずびくっと目を見開く。

「そ、そうか?なんともないぞ!至って健康だが!」

「…煉獄、そりゃあ恋煩いだ。…オシ!お前ら!今日は残業なしでド派手に飲むぞ!!さっさと仕事片付けんぞ!!」

「お、遂に煉獄の恋バナ聞けるってかァ?」

「…仕事どころではないな…」

義勇は既にデスクを片づけ始めていた。

「…宇髄、俺も行く」

「お!伊黒にしては積極的だな!いいねぇ!」

杏寿郎は仕事を終えると、皆に巻き込まれるようにして、居酒屋に連れていかれた。

・・・

皆は杏寿郎のことを慰めつつも、今はかれんが自分の夢に向けて頑張っているのなら、静かに見守ってあげるのが一番だと言われた。確かにその通りなのだが、かれんを想うとその気持ちに歯止めがかからない。杏寿郎はふうとため息をついた。

「煉獄、…彼女を信じろ」

普段は滅多に口出しをしない小芭内だったが、杏寿郎の想いに突き動かされたのか、熱く語ってくれた。

そして皆で飲んでいる最中、杏寿郎のスマホがなった。

(…誰だ…?)

ふとスマホの画面を見ると、かれんからの着信だった。

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