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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第5章 ロータリーの歌姫〈煉獄杏寿郎〉




「…自分にはコレしか特技がなくて。でも楽しいの。…ギターがあるから、生きてこれた気がする。なんか歌ってるとね、今の自分から抜け出せるような感覚になるの。…歌い終われば現実に戻されるけどね」

かれんは苦笑いをしながら、食後のコーヒーを啜る。杏寿郎はかれんの話しをただじっと聞いていた。

「…ちょっと、先生。そんな悲しい顔しないで?なんか私、悲劇のヒロインみたいじゃない」

「いや!その、違うんだ。かれんはものすごい努力家なんだと思ってな…。誰でもできることではない」

「…いつも煉獄先生は私のことを認めてくれて嬉しい。ありがとう。…煉獄先生に会えて良かった。自分の中でやっと踏ん切りがついた」

「…?踏ん切り…?」

「うん、オーディション、受けてみようと思って」

「…!!それはすごい!!かれんの歌声はきっと皆の心に…いや世界中の皆に届く!」

「ふふっ、もう先生ってホント面白いなあ!でもそうね、そんなふうになれたら…素敵ね」

かれんはその時、本当に嬉しそうに笑った。杏寿郎はその笑顔に再び胸が強く高まった。

「…かれんなら大丈夫だ。俺は信じている」

「ありがとう。煉獄先生」

二人は深夜のファミレスで遅くまで話しをした。それは二人にとってとても心癒される時間だった。愉しい時間は刻々と過ぎてゆく。
夜も大分深まり、二人はファミレスを出て、誰もいない公園でかれんは何曲か杏寿郎に歌を歌ってくれた。前よりもかれんの声色が甘く聞こえてくるような気がした。これは初めて歌う曲なんだと、照れくさそうに歌うかれんのその表情が可愛らしく、杏寿郎はそんなかれんに見惚れていた。かれんは歌いながら、ちらりと杏寿郎と目を合わせて微笑んだ。杏寿郎は抱きしめたくなる気持ちをぐっと抑え込む。
自分だけに向けて、かれんが歌ってくれている、それだけで杏寿郎の心は弾むように幸せな気持ちで満たされてゆく。
もう夜が明けようとしている頃、かれんと杏寿郎は手を繋いで、かれんの家に向かった。

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