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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第5章 ロータリーの歌姫〈煉獄杏寿郎〉




杏寿郎の手がそっとかれんの顎に触れ、顔を横に向かされた。頬は薄らと赤く腫れていた。

「…教師として許されることではないが、今日は俺の家に…」

「ふふ、煉獄センセ、心配ありがとう。大丈夫よ。家の裏口の鍵持ってるの。…父親が寝た頃に戻るから」

かれんはポケットに入っていた鍵を杏寿郎の前で揺らして見せた。

「…そうか、でもご両親に…」

「ダイジョーブ!もう慣れっこだから、こんなの。今に始まったことじゃないの」

かれんは立ち上がると、道に横たわったギターの入ったケースを持ち上げた。

「…煉獄先生、今日はごめんね。ずっと待ってくれてたんでしょ?」

「…かれんが来ないので、何かあったのと思ってここまで来てしまった…。すまない、こんなことをするつもりは…」

杏寿郎は勝手に家の近くまで来たこと、かれんの父親に突っ掛かってしまったことを酷く反省していた。

「いいよ、そんなこと気にしないで。むしろ巻き込んじゃってごめんね。助けてくれてありがとね」

かれんは切なそうに笑った。きっと何度も歌うことを止められ認めて貰えずにいたんだろう、それでも直向きに自分の夢を追いかけて、少しずつ形にしようと一生懸命に前を向いて生きているんだと、杏寿郎はかれんのその姿に胸を打たれた。

「なんか、お腹空いちゃった!ね、何か食べに行かない?私奢るから!」

かれんは何事もなかったように、ぱっと笑顔になった。杏寿郎もその笑顔に自然と笑みが溢れる。

「ああ、何か美味しいものを一緒に食べよう」

「うん!」

・・・

杏寿郎は途中コンビニに立ち寄ると、小さい保冷剤を買ってハンカチでそれを包み、かれんの頬に当ててあげた。誰かに何か言われたら虫歯が痛いって言っとくね!とかれんは杏寿郎に笑った。

その後二人は近くにあったファミレスに入った。二人は様々な話しをした。
かれんの両親は小さい頃に離婚し、父親に引き取られ、今は父親の再婚相手の女性と三人で暮らしていると。高校に入学するも上手く周りに馴染めず中退し、家のクローゼットにあったギターを独学で練習し、一人で作詞作曲をしては時折あの駅前で歌っていると。

「…一人であそこまでギターを弾けるようになったのか!?それはすごいな!作詞作曲も…!」

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