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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第4章 夏の贈りもの〈煉獄杏寿郎〉




「ううん、謝らないで?私が杏寿郎だったら同じことをするもの。念の為異常はないか、明日の朝一番で動物病院に連れていこうと思う」

「ああ、そうしよう。名前は…何がいいだろうか?」

「うーん…そうねえ…。…“こむぎ”。綺麗な小麦色だから、こむぎ!…そのまますぎるかな…?」

「こむぎか…!うむ!いいな!良い名だ!」

杏寿郎はこむぎを抱き上げると、嬉しそうにしっぽを降っていた。

「こむぎ!今日からずっと一緒だ!」
「今日からよろしくね、こむぎ!」

「ワン!」

こむぎのまだ幼い鳴き声が鈴の音のように明るく響いた。

・・・

沸き立ての風呂で、かれんと杏寿郎はこむぎを洗ってあげた。かれんがこむぎの体を拭いている間、雨もすっかり止んでいたので、杏寿郎は近くのスーパーで子犬用のドックフードを買ってきた。こむぎはお腹が空いていたのか、一瞬で平らげてしまった。

満腹になり安心したのか、こむぎはブランケットの上ですうすうと小さな寝息を立てていた。

「…まるで赤ん坊のようだな」

こむぎの穏やかな寝顔を、杏寿郎は一緒になって寝転びながらじっと見つめていた。

「本当ね。きっと杏寿郎に感謝してるよ。連れてきてくれてありがとうって」

「それはかれんにもだろう。二人で大切に育てていこう」

「うん!」

・・・

その晩のこと。


クゥーン…クゥーン…


「…こむぎ?」

真夜中、かれんはこむぎの鳴き声で目が覚めた。かれんと杏寿郎は寝室にあるダブルベットで寝ていた。こむぎもその寝室に連れてきて、床にクッションとブランケットを敷いて寝かせてあげていた。

かれんは体を起こしこむぎを見ると、こむぎはベッドの下にしゃがみ、今にも泣き出しそうな潤んだような瞳でかれんを見つめた。

「…かれん、どうした?」

「一人になったのかと思って、怖くなっちゃったのね」

かれんはベッドからこむぎを撫でるとまた小さくクーンと鳴いた。

「大丈夫よ。私も杏寿郎もここにいるよ。…一緒に寝る?」

こむぎはその言葉を理解したように、小さいしっぽをぶんぶんと振っていた。

「杏寿郎、こむぎと一緒に寝てもいい?」

「ああ、もちろんだ。三人で一緒に寝よう。こむぎ、こっちへおいで」

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