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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第4章 夏の贈りもの〈煉獄杏寿郎〉




杏寿郎はベッドから降りて、こむぎを抱きかかえベッドの真ん中に下ろした。こむぎは初めてのベッドの感触に嬉しそうにはしゃいでいた。

「ふふっ、こむぎったら嬉しそう。こむぎ、ベッドから落ちたら大変だから、私たちの間においで?」

こむぎは小さく首を傾げると、かれんと杏寿郎の間にうずくまった。かれんと杏寿郎の顔を交互に見つめる。

「こむぎはお利口さんねえ」

「今日は疲れただろう。朝までゆっくり休むといい」

二人の言葉に安心したようにこむぎは目を閉じた。
その愛らしい寝顔を見つめながら、かれんと杏寿郎も眠りについた。


・・・


それから数年後のとある夏。

リビングでは小さな赤子が、おもちゃを手に揺らしながらかれんを見つめていた。かれんと杏寿郎の間に昨年の初夏に誕生した長女の小夏(こなつ)だった。


「…あう…おむぎ!おむぎっ!」

「…!!!今、こむぎって言ったの…!?ねえ、杏寿郎!来て!今、小夏がこむぎの名前を呼んだよ!ね!?こむぎ、そうだよね!?」

「ワン!!」

成犬の大きさまでに成長したこむぎも嬉しそうに小夏を見つめ、しっぽを振っている。着替えていた杏寿郎が慌ててリビングにやってきた。

「よもや!!小夏!是非もう一度聞かせてくれないか!」

「うー…?…ぱ、ぱ。ままあ!」

「「…!!??」」

小夏は口をあぐあぐさせながら、楽しそうにおもちゃを振り回していた。この時初めて、小夏はかれんと杏寿郎のことを呼んだのだ。

「…杏寿郎…今の聞いた…?私、動画も何も撮ってない…」

「…よもやよもやだ…」

「うーっ!よもあ!こむぎ、ぱぱままっ!」

「「!!!」」


小夏とこむぎから届けられる数えきれないほどのしあわせな贈りものが、煉獄家の夏をさらに彩る。今年はどんな夏になっていくのだろうか。










 おしまい 𓂃◌𓈒𓐍

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