第27章 二人の約束〈宇髄天元〉
「ううん!全然!…あ、そうだ、私悲鳴嶼先生のところに行って、先週先生達に配ったアンケート、貰ってくる!忘れてた!」
「それなら俺が行こう!」
「ううん!私行ってくる!この学級日誌も渡さなくちゃなの」
「そうか、では生徒会室で!」
杏寿郎は先に教室を出ていくと、かれんは学級日誌と鞄を手に持った。
「…今日も生徒会かよ」
「…!」
その声にはっとしてかれんが顔を上げると、天元がズボンのポケットに手を入れながら歩いてきた。
「天元くん…!どうしたの?何か…忘れ物?」
「…毎日あんのかよ、生徒会って」
かれんの問いには答えずに、天元は外方を向いたまま話した。
「ううん、毎日ではないけれど…、必要に応じてやってるって感じかな」
「……ふーん…」
天元は興味がなさそうに、近くの机に腰掛けた。
「…天元くん、今日はまだ帰らな…」
「あの、煉獄ってやつと、」
「…?」
かれんの言葉を天元が遮った。かれんは天元が何を言おうとしているのか分からず、じっとその横顔を見つめた。
「…仲、いいのな」
初めて聞いた天元の沈んだ声色。
横顔から見えるその紅い瞳も、僅かに揺れたような気がした。
「べ、別に…っ、杏寿郎くんとは同じ生徒会だし、…そ、それだけのことよ!…そんなんじゃ、…ないもん」
天元がゆっくりかれんに顔を向けると、かれんは泣いていた。
「…え?ちょっ、何泣いてんの??え?!どうしたんだよかれん」
天元は立ち上がり焦って宥めるも、かれんは次々に溢れる涙を抑えきれず、小さな子どものように泣き出してしまった。
「…んで泣くんだよー…。…おい、かれん?ホラ、もう泣くんじゃねぇ」
天元は、指先で無造作にかれんの頬についた涙を拭き取る。されるがままのかれんは、それでもまだぐすぐすと泣いていた。
「…なのは、天元くん、だもん」
「…え?なんつった?」
俯き必死に涙を堪えようとするかれんの口元が、ちいさく動く。
「なになに。聞こえねぇって」
天元はその声を聞こうと、かれんの顔を覗いた。かれんはまだ濡れた目元のまま、天元を見上げた。
「…ふん。もう、言わない」
「はあ?!」