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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第26章 おそろいの絆創膏〈煉獄杏寿郎〉




かれんはそれを心配そうに見つめ、何か他にできることはないかと思い巡らせる。そしてふと、制服のポケットに蜜璃からもらった予備の絆創膏をしまったことを思い出した。

「煉獄先生!この絆創膏、使ってください!」

「!」

杏寿郎はかれんから差し出された絆創膏を見つめ、目を丸くする。

「よもや!君は用意周到だな!でもこの程度の傷ならば…」

「いえ!万が一化膿してしまったら大変ですから!」

そう言いながら、かれんは杏寿郎の手を取ると、指先に絆創膏をくるりと巻いた。

「…よし!これで大丈夫です!」

思いがけないかれんの行動に、杏寿郎の鼓動が何故か早まった。

「す、すまない!手当までしてもらい、医師として不甲斐ない…。……はて、君の指…」

「…?」

杏寿郎はかれんの指先に巻かれた絆創膏に目を止めた。

「あっ、これっ、さっき紙で切ってしまって…!でも、もう大丈夫です!」

すると、笑いを堪えていたかのように杏寿郎はくすっと笑った。

「えっ!?煉獄先生…!?いかがされましたか?!」

「失敬、急に笑ったりしてすまなかった。…君と同じ絆創膏をしていると、思ってな」

かれんと杏寿郎の人差し指に巻かれた絆創膏。
二人の視線がぱちりと交わる。


「ふふっ、本当です!おそろいの絆創膏ですね!」


思いがけない偶然に、二人は頬を染め笑った。


「…あっ、そうだ!書類!煉獄先生!私まだ残ってる仕事があるので、これで失礼致します!ワクチン接種、お疲れ様でした!!」

杏寿郎にぺこりと頭を下げると、かれんは急足で事務室へと戻っていった。


 …檜原かれん…さん…、というのか…


杏寿郎は去り際にかれんのネームプレートを見た。今日会ったばかりだったが、何故かかれんのことが頭から離れなくなっていた。

「煉獄先生!東病棟から患者さんの薬の件で連絡が…!」

「うむ!すぐに向かう!」

杏寿郎は指先の絆創膏に小さく笑みを落とすと、診察室を後にした。


・・・

 は〜…
 終わった〜〜…

残業すること1時間半。事務室にはかれんだけが残っていた。
背伸びをして、デスクの上を片付けて帰り支度をしていた時だった。

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