第26章 おそろいの絆創膏〈煉獄杏寿郎〉
「六太少年。本当によく頑張ったな」
ぽん、と杏寿郎の大きな掌が六太の頭をやさしく撫でた。
「…ちゅうしゃのいたいの、もうへいき…?」
まだ少し涙声の残る六太は、心配そうに杏寿郎を見つめる。
「ああ、腕に絆創膏もしっかり貼ってあるから、もう安心だ。今日はゆっくり休むといい」
杏寿郎がそう言って笑うと、六太もにっこり笑った。
「…うん。れんごくせんせい、ありがとう」
「煉獄先生、看護師さん、今日はありがとうございました。では失礼します」
皆で二人を見送ると、母親は会釈をし、六太は手を振って帰っていった。
「君は優しいのだな」
「 ! 」
ふとかれんが隣を見ると、杏寿郎が立っていた。
「い、いえ!そんな!…小さい子が泣いていると、どうしても放っておけなくて…」
余計なことをしてすみませんとかれんが謝ると、杏寿郎が首を横に振った。
「いや、俺も君の立場であったら、同じことをするだろう。やはり子どもには笑顔が一番似合うからな。…子どもが好きで、小児科医を志したが、…医者になってからはその子ども達から一番嫌われる存在になってしまった」
すこし寂しそうに笑う杏寿郎に、かれんは目を奪われた。きっとこの職に就いてから何度もそう思いながらも、たくさんの子ども達の病を救ってきたに違いないと、かれんは思った。
「いえ、そんなことありません…っ!煉獄先生のその笑顔に元気をもらってる子ども達がたくさんいます…!!そんなこと、絶対にありません!!」
身を乗り出すように杏寿郎に話すかれんに、杏寿郎は嬉しさのあまり声に詰まってしまった。
「ありがとう。そう言ってもらえると、これからも医師として頑張ろうと思えてくる」
ふわりと笑う杏寿郎に、かれんはどきっと胸を打たれた。
「うむ!引き止めてしまい、すまなかった!」
「い、いえ!私こそすみません!では失礼しま…、!! 煉獄先生!指に血が…っ!」
「む!?」
なんと杏寿郎の指先の小さな切り傷から血が滴っていたのだ。
「このぐらいの擦り傷、大したことはない!暫くすれば治るだろう!」
そう言って杏寿郎は持っていたハンカチで指を止血した。