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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第26章 おそろいの絆創膏〈煉獄杏寿郎〉




 今日はなんだか書類が多いな…


そんな日に限って、処理しなければならない書類が山積みだ。かれんは必死に進めていくも、刻々と時間が経ってゆく。


 ひゃー…この申請書、
 めっちゃ書くところある…


眉間に皺を寄せながら、数十枚にも及ぶ資料を捲りながらせっせと目を通していた時、


「いたっ」


かれんは書類の紙で指先を切ってしまったのだ。小さな掠り傷だったが、ぴりぴりと痛みが走る。ひとまず止血をするため、かれんはデスクにあったティッシュで傷口を押さえた。


「かれんちゃん!?どうしたの!?指、怪我しちゃったの?!」

「…!蜜璃ちゃん…!」


そこに現れたのは、唯一の同期である甘露寺蜜璃だった。ちょっと待ってね!と、持っていたポーチから何かを探しているようだった。

「…あった!絆創膏!今貼ってあげるね!」

「蜜璃ちゃん…ありがとう…っ」

蜜璃はかれんの指先に絆創膏をそっと貼ってくれた。

「よし!できた!念の為に予備の絆創膏も渡しておくね!」

「え!でも、もう貼ってもらったから大丈夫よ!」

「でもほら!万が一ってことがあるでしょ?」

はいどうぞ!と蜜璃は絆創膏をかれんに渡してくれた。

「何から何までありがとう、蜜璃ちゃん…!」

どういたしまして!とにっこり笑う蜜璃だったが、時計を見た途端にはっと目を丸くした。

「…あれ、かれんちゃん、今日もしかしてワクチン接種の外来担当日?あと10分後だわ!大変!」

「わっ!ほんとだ!ごめん、私行ってくるね!絆創膏、本当にありがとう!」

かれんは慌ててデスク周りを整えると、事務室を後にした。

・・・


「成程!この名簿が今日来る患者のリストですね!」


杏寿郎は、小児科のワクチン接種の流れを看護師から教えてもらっていた。
かれんは来院した患者を順番に診察室の前から呼ぶ係だった。

かれんは半開きになった診察室のドアから、中をちらりと覗く。
そこには顎に手を当て、ふむふむとリストを眺めている杏寿郎の横顔が見えた。その凛々しくも優しい笑みを浮かべる杏寿郎をかれんはまじまじと見つめてしまった。

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