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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第25章 天明のひとときを、いつか〈宇髄天元〉



隠はきょとんとするも、かれんの点滴残量と足の傷口を確認すると病室を後にした。


***


 宇髄様…かっこよかったなあ…


かれんはぼんやりと昨晩のことを思い出す。

以前に一度だけ、天元が率いる任務に同行したことがあった。かれんが鬼殺隊に入隊して、まだ間もない頃だった。柱など、自分にとって雲の上の存在感であり、緊張のあまり話しかけることさえ出来なかった。
また任務にまだ慣れていないこともあり、見様見真似で上の隊士達にくらいついていた日々。その日も必死だった。


『そんなに気ぃ張ってると、すぐにやられちまうぜ?』

『…え…?』


日輪刀を構えながら雑木林を進んでいる最中、天元の声が頭上から降ってきた。


『…で、でも、いつ鬼が出てくるか分からな…』

『まーそう固くなるなって。俺らがついてる』


天元はぽんとかれんの肩を叩くと、先頭を切って前に進み出てゆく。
天元のその堂々たる後ろ姿に、自分もいつか同じように強く逞しくなりたいと、そう思った。

それなのに、未だ任務で鬼の頚を落とした数は少なく、昨晩の任務も遂行できなかった。かれんは無力な自分に苛立ちを覚えた。


 どうやったら…
 宇髄様みたく強くなれるのかな…


陽が傾く部屋で悶々としてしまう。
かれんのため息だけが部屋に響いた。

すると、とんとんと再び部屋の扉が鳴った。
はい、と返事をするも、こんな時間に誰だろうとかれんは開かれる扉を見る。


「お、元気そうだな?」

「…!! う、宇髄様…?!」


なんとそこに現れたのは天元だった。
昨晩と同じく着流し姿で、髪を下ろし装飾の付いた眼帯姿だった。

「怪我の具合はどうだ?」

「お、お陰様で、痛みは引いてきてて…、問題なく、大丈夫、です」

「まぁ、あと一週間ってとこだな」

そう言いながらかれんの寝台の横に腰掛けた。
かれんは緊張してしまい、うまく天元を直視できない。
先に口を開いたのは、天元だった。


「単独任務、よく頑張ったな」

「…!」


思いもよらない言葉をかけてくれたことにかれんは驚く。
そうっと顔を上げると、天元が穏やかに笑っていた。
でもかれんはすぐに俯き、握った掌に力が入った。

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