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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第25章 天明のひとときを、いつか〈宇髄天元〉



 …そうだ、

 宇髄様が助けてくださったあと…
 鬼の毒が回って…


天元が鬼の討伐を成し遂げた以降の記憶が曖昧だった。
しかしここに寝ているということは、天元が蝶屋敷に伝達し、隠が処置をしてくれたのだろう。そうかれんは思った。


 宇髄様にちゃんとお礼を言わなくちゃ…

 …でも、もう引退されているし、
 会うことは叶わないのかな…


数ヶ月前、天元は鬼の出没が噂されていた吉原・遊郭へと潜入し、見事上弦の陸を討伐した。しかし、その代償に左手と左目を失い、皆に惜しまれながら柱を引退したのだった。

かれんはぼんやりと病室の窓から外を眺める。
空の陽が傾き始め、部屋中が茜色に染められてゆく。

すると、とんとんと扉が鳴った。
はい、とかれんが返事をすると、一人の女性の隠が入室してきた。

「気が付かれましたか…!良かった…っ!体調はいかがですか?」

「お陰様でだいぶ楽になりました…!…すみません、助けていただいた時のことをあまり覚えていなくて…」

「いえ、私達は何も!全て元柱である宇髄様が対応してくださったんです」

「えっ…!そうなのですか…?!」

「はい、宇髄様が解毒薬を直接檜原さんに含ませてくださって…!的確な判断のお陰で、毒の回りをすぐに阻止することができたんです」

「…?…"宇髄様が直接、解毒薬を含ませてくださって"…??」

隠の言葉に、かれんの思考回路が停止する。

「…あっ、えと、その、…檜原さん、呼吸が止まりかけてて…、それで解毒薬が服用できなくて、そしたら、…えと、宇髄様が、…口移しで、薬を飲ませくださったんです…っ」

「…えっ…?!」

かれんは思わず手を口先に当てる。


 もしかしてあの夢って…っ


唇にあたたかい温度を感じたのは、そういうことだったのかと、かれんの顔が性急に赤く染まり始めた。

「でも、流石宇髄様です…。戦闘術はもちろん、手当の処置までもが完璧で…。私達もまだまだだと痛感しました…」

「そ、そうだったんですね…。…あ、あの、因みに、宇髄様は…今どちらに…?」

「檜原さんを処置された後、ご自宅に戻られたのではないかと思います。…何かありましたか?」

「あっ、いえ!何でも、ないです…!」

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