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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉




 杏寿郎さんに…

 会いたいなぁ…っ


俯き泣くかれんの着物に、ぽたぽたと涙の跡が残ってゆく。

花火の音は、既に聞こえなくなっていた。






























「かれん…!!」

「…! 杏寿郎…さん…?!」


名前を呼ばれて顔を上げると、庭先には息を切らした杏寿郎が立っていたのだ。
あまりの突然のことに、かれんは驚きを隠せない。

「杏寿郎さん…っ、任務のはずでは…?!」

「それが、担当だった柱が無事帰還してな。そのまま任務に当たってくれることになり、俺も帰宅許可が下りた。…花火に間に合うようにと急いだのだが…、本当にすまない…っ」

かれんは目の前に杏寿郎がいることの嬉しさのあまり、その喜びを何と言い表していいか分からず、ただじっと杏寿郎を見つめてしまった。

「…かれん…?!どうした…?」

「ご、ごめんなさい…っ。杏寿郎さんがまさかこんなにも早くお帰りになるとは思ってもみなくて、…その、あまりの嬉しさに何とお伝えしていいか、分からなくなってしまいました…っ」

困惑し、きょとんとするかれんに、杏寿郎はつい笑みが溢れてしまった。

「…っす、すまない…!突然笑ったりして…っ」

「いえ!杏寿郎さんがお戻りになってくださって、本当に…、本当に嬉しくて…。ご無事で何よりです…っ!」

いつも通りにっこり笑うかれんに、杏寿郎はほっと胸を撫で下ろした。


「…縁側に居たのか?」

「はい。夜風が涼しくて、風に当たっていました。…月がとっても綺麗で…、つい見惚れてしまいました…!」

「…! 俺も任務先で月を見ていた。かれんも見ているだろうかと…、そう思いながら」

「! ふふっ、離れていても、同じ、ですね…!」

「ああ。どんな時も、一緒だな」


二人は、互いの同じ想いに嬉しさが込み上げた。


「…そうだ!かれん、少し待っていてくれ!」

「…? は、はい!」


すると杏寿郎は縁側で履物を脱ぎ、自室に向かった。
暫くして杏寿郎が戻ってくると、その手には小さな小包みを持っていた。

「…少しの間、目を閉じていてもらえるか?」

「えっ、目を、ですか?!」

「うむ!」

そう言われて、かれんはぎゅっと目を閉じた。

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