第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉
「…これを、かれんに」
かれんがそっと目を開けると、目の前の箱には花の飾りがあしらわれた簪が入っていた。
「…!! 杏寿郎さん、これ…!」
「今日、呉服屋でかれんが浴衣を見繕って貰っている間、目に留まってな。…本当は花火の前に渡したかったのだが…、渡しそびれてしまった」
「こんな素敵な髪飾り、初めて見ました…!とっても嬉しいです…!大切にします…っ!」
「かれん。…今、付けてみても構わないか?」
「えっ…!?」
杏寿郎は簪を手に取るとかれんの後ろに回り、くるりと丸く結ったかれんの髪にさしてくれた。
「…うむ。かれんに良く似合う」
嬉しそうに笑う杏寿郎を見て、かれんは泣きそうになってしまった。幸せという以上の言葉が見つからない。このまま声を出したら、嬉しさのあまり本当に泣いてしまいそうだった。
「杏寿郎さん…っ、ありがとうございます…っ。私、本当に幸せです…!」
喜ぶかれんを見て、杏寿郎も目を細めた。
「来月、完成する浴衣を着て、何処か二人で出かけよう。それ以外にも、沢山、沢山出かけよう。これからも、かれんと一緒に…沢山の時間を、過ごしていきたい」
かれんは杏寿郎と同じ想いを聞いて、声にならない幸せに、涙を流しながら何度も何度も頷く。
美しい夜月は、仲睦まじい二人をそっと見つめていた。
おしまい 𓂃◌𓈒𓐍