• テキストサイズ

檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉




呉服屋を出た後、小料理屋に寄り昼食を食べた。夫婦であればいたって普通のことだが、かれんと杏寿郎にとっては何よりも至福なひとときだった。


帰宅後、夜の花火に備えてかれんは自室で着ていく浴衣を選んでいた。
花火も勿論楽しみだが、こうやって出かける前に着ていくものを選んでいる時間も、わくわくと心が弾む。何と言っても、大好きな杏寿郎と見たかった花火が一緒に見られるのだ。


 そうだ、髪飾りも
 何か用意しておけばよかったわ…


伸ばしていた髪も背中の中間ほどまで伸びていたが、普段は一括りしてくるりと紙紐で纏めるだけだった。以前、出向いた店で目に留まった簪があったが、特に出かける予定もなかったので、そのまま店を出てしまった。


 来年の夏には
 何かお気に入りの髪飾りを
 用意しておけたらいいな…!


杏寿郎との楽しみはこれきりではないと言い聞かせ、かれんは一番お気に入りの桔梗柄の浴衣を着て行くことに決めた。


その時だった。


「…かれん、いいか?」

「! はい!大丈夫です!」


襖の外から杏寿郎の声がした。
静かに襖が開くと、少し気落ちした表情の杏寿郎が立っていた。

「…杏寿郎さん…、どうかされましたか…?どこかご気分でも…」

「…それが…、今夜の花火のことなのだが、…すまない、先刻要から伝令が入り、急遽市外への見回りが入ってしまったんだ。担当の柱が遠方からの帰還に遅れているため、代理を頼まれてしまってな…。…折角のかれんとの予定なのだが…、」

「…!」

咄嗟に、かれんは声が出なかった。出せなかったのだ。
久しぶりの杏寿郎との外出に心弾ませ、夜も一緒に花火が見れると、かれんは心から楽しみにしていたのだ。

かれんはぐっと手をきつく握った。

「だ、大丈夫ですよ!花火はきっと来年もありますし!それに何よりも杏寿郎さんの任務の方が大切ですから!」

「…かれん…、本当にすまない…」

「そんな!謝らないでください!私は大丈夫です!…しゅ、出発は何時頃ですか?」

「…この後、支度をしたらすぐに出ようと思っている。明け方には戻れると思うのだが…」

「畏まりました…!そうしたら何か召し上がっていかれるといいかと思います。軽食を用意してまいりますね!」

/ 218ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp