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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉




「…かれん、こうやって一緒にかれんの隣を歩けることだけでも充分に幸せなことなのに、…もっとかれんの近くに居たいと思ってしまう」

心からしあわせそうに笑う杏寿郎に、かれんの胸がきゅっと締め付けられた。
かれんは、あまりの嬉しさにどう返事を返して良いか分からず、ただじっと杏寿郎を見つめてしまっていた。

「俺の我儘の所為で、かれんを困らせてしまったな。…すまなかった」

「ち、違うんです…!!私もとっても幸せで、嬉しくて…!なのに、ごめんなさい、この気持ちをどうやって言い表していいか、分からなくなってしまいました…っ」

かれんも必死で気持ちを伝えようとするが、幸せという以上の言葉が見つからない。そんなかれんの姿を見た杏寿郎は口元に手を当てると、暫く黙り込んでしまった。

「…きょ、杏寿郎さん…?どうされましたか…??」

「す、すまない。困った顔のかれんがあまりにも可愛らしくて…、つい見惚れてしまっていた…」

「…っ?! え?!? ちょ、っと、えっっ?!」

まさか杏寿郎がそんなふうに思ってくれていたことに、かれんは恥ずかしさのあまりどんどん顔が熱くなる。

「…照れた表情も、かれんは愛いな…」

「も、もう!杏寿郎さん!!恥ずかしくなってしまうので、これ以上はだめです!禁止です!」

「む!どうしてだ!可憐な妻を褒めてはいけないのだろうか!」

「だ、だめなものはだめなんです!…っさ、杏寿郎さんっ!帰りましょう?お夕飯が遅くなってしまいます!」

「ではこの続きは食後にとっておこう!かれんへ伝えたい想いをまだまだ伝えきれてないからな!!」

「えっっ?!?」


かれんと杏寿郎の頬が赤いのは、夕陽だけのせいではなかった。
束の間の、夫婦水入らずの時間は何にも変えられない特別な時間だ。

二人の手はぎゅっと繋がれたまま、家路にへと向かっていった。



そして翌朝。

二人は普段から通っている呉服屋に出向き、新しい浴衣をそれぞれ仕立てて貰った。杏寿郎は藍色の浴衣を、かれんは撫子柄の浴衣を見繕った。

完成は一月後のとのことで、また二人で受け取りに来ようということになった。

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