第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉
「主人!いつも美味しい芋羊羹をありがとうございます!」
杏寿郎の溌剌とした声が店内に響く。
「いやぁ、そう言ってもらえると作ってる甲斐があるねぇ!よし!今日はおまけで、もう一本持ってってくれ!」
亭主は、芋羊羹をもう一本手に取り、さっと紙に包みかれんに差し出した。
「そ、そんな!いけません!ちゃんとお支払いをさせてください…!」
かれんは小銭入れから追加の料金を出そうとしても、亭主はそれを拒んだ。
「いいったらいいったら!これは私からの気持ちなんだから!…そうか、今日はご主人と一緒だったんだね。どうりで奥さん、終始にこにこと嬉しそうな顔をしているなあと思ってはいたんだが…!いやあ、あんた達、いいご夫婦だねぇ!」
「「 …!! 」」
かれんと杏寿郎は顔を見合わすと、同時に照れ笑いをしてしまった。
「こりゃきっと、芋羊羹も喜んでるに違いないさ!」
かれんは亭主から羊羹を受け取ると、胸にぎゅっと抱きかかえた。
「…主人、色々とお気遣い頂き感謝します。妻と大切にいただきます」
「本当にありがとうございます…!また主人とお伺いします!」
いつもありがとね!毎度!と、亭主はとびきりの笑顔で二人に微笑んでくれた。
その帰り道。
「杏寿郎さん、…お荷物重くないですか?私も何か持たせてください!」
「うむ!全く問題ない!…では、空いている俺の右手にかれんの手を乗せてくれないか?」
杏寿郎は自身の右手を、かれんの前に差し出した。
「…? こう、ですか…?」
かれんはそうっと、杏寿郎の右手に自分の左手を重ねた。
「うむ!これで家まで手を繋いで帰れるな!」
「っ!!」
杏寿郎はぎゅっと、かれんの左手を握ってくれた。
そういうことだったのかと、かれんは杏寿郎に繋がれた手元を見て、どんどん顔が熱ってくるのが分かった。
「きょ、杏寿郎さん…っ!他の鬼殺隊の方に見られたら…!!」
杏寿郎と道で手を繋いで歩くなど、夫婦になってから初めてではないかと、かれんは嬉しさが込み上げてくるも緊張でばくばくと心臓が痛いほど跳ねた。
杏寿郎はそんなかれんを愛おしそうに見つめると、その手をさらにぎゅっとつよく握ってくれた。